ぴのした

ジプシーのときのぴのしたのレビュー・感想・評価

ジプシーのとき(1989年製作の映画)
3.7
月に一回くらい、無性にクストリッツァの映画が観たくなる時がある。

ド派手なアクション映画も、しっとりした雰囲気映画も見たくなくて、ジプシー音楽がウンザウンザ鳴って、ガチョウと銃弾が画面を右往左往するカオスな映像しか受け付けない時がある。

今回もしょっぱなから、ガチョウや七面鳥が大活躍で最高だった。恋人の名前を叫びながら教会で首を吊ったり、スネークみたいにダンボールで移動したりとくだらないギャグシーンもつぼ。

なのに最後は悲しいね、なんでこう悲しい方向に持っていくかなあ。黒猫白猫みたく、ばあちゃんと妻と一緒に貧しくも楽しく暮らしていれば良かったのにね。いつも通り、喜劇と悲劇の落差がすごい。

タイトルからジプシーの民族の暮らしに焦点を当てた映画なのかと思いきや、わりと主人公の人生をずっと追うような映画だった。黒猫白猫の結婚式シーンとかの方がよっぽどジプシー感がある。

特に印象的だったのは、ベルハンが村を出るシーン。最高にエモい。りんご飴を作るカットを挟んだり、バックに楽器隊が出てきたり。どのカットもすっごくカッコいい。

一方でラストの撃たれながら列車に降りるシーンとかはインド映画のようなB級感…。この落差はなんだ。