鋼鉄隊長

フェイズ IV/戦慄!昆虫パニックの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

4.5
購入したDVDで鑑賞。

【あらすじ】
宇宙からの影響により高い知能を持つ新種の蟻が出現。生物学者のホッブスらは、蟻塚の近くに研究施設を作り観察した。しかし彼らの進化は想像をはるかに上回っていた…。

 「人間以外では蟻だけが戦争をします」
 この台詞は、蟻映画の傑作『放射能X』(1954)のものだ。その言葉に忠実に従ったのが、同じく優秀な蟻映画の一つ『フェイズⅣ/戦慄!昆虫パニック』である。蟻と人間との戦争を描いた傑作だ。この作品には四つの魅力が存在する。
 まず特筆すべきは、お洒落さだ。蟻たちのセンスはずば抜けて高い!人間よりも高くそびえ立つ細い長方形の蟻塚。上部は斜めに傾いたブロックが重なり合い、その隙間が入口となっている。まるでオーパーツのようだ。芸術的で美しい。作品全体もアート映画のような独特なショットで飾られているのだが、これは監督がプレミンジャーやヒッチコックのタイトルデザインを担当した芸術家のソール・バスであるからこそだ。ちなみに今回の作品は、彼の唯一の長編映画でもある。
 そして蟻たちはお洒落さんなだけでは無い。高い知能を使った残忍な戦い方をする。反射鏡のような蟻塚を築いて人間に灼熱地獄をお見舞いするといった変わった戦法を取る。拠点である蟻塚から繰り出す無駄のない攻撃の数々は、蟻たちを一つの知的で巨大な生物のように思わせる。ここには『放射能X』のような「女王蟻だけを倒せば万事解決」なんて甘い考えは通用しない。一にして全、全にして一。全員が司令塔のような最強軍団である。彼らは人類をはるかに超越した完全無欠のハイパー蟻なのだ!
 また、この映画が何よりも優れているのは、お洒落で賢い蟻が本物の映像で描かれていることにある。本物の動物を使った映画技法は「トカゲ特撮」と呼ばれる。今でこそ動物愛護の観点から再現不能な技法だが、それ以前に動物が思うように動かないのが最大の難点だ。そこから考えると今回の蟻はアカデミー賞ものの名優だろう。本当に演技しているようだ。
 ここまで言えば素晴らしさは十分に伝わっただろうが、まだまだ凄い点はある。最後のオチは圧巻!戦争の結末は予想することが不可能だ。この映画を観たことが無い方はネタバレなんて野暮なことはせず、一度観てみることを強くオススメする。全くもって至高の映画である。やはり蟻映画は傑作揃いだ。蟻映画万歳!!

〈追記〉
 賢い蟻で思い出したが、フランスの作家ベルナール・ウェルベルの小説『蟻』もオススメ! 『フェイズⅣ』の姉妹作のような作品だ。ちなみにこの小説は『蟻の時代』と『蟻の革命』の二冊の続きがある。
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