鋼鉄隊長

クワイエット・プレイスの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
4.0
塚口サンサン劇場にて鑑賞。(特音静寂上映)

【あらすじ】
隕石に乗って「何か」が襲来。人類の大半は餌食となった。静寂を守ることで生き延びたアボット一家は、恐怖に晒されながら生活していたが、そこに「何か」の魔の手が迫っていた…。

 まさにポスト・アポカリプス(終末後)映画に昇華された『トレマーズ』(1990)!! これは素晴らしい怪獣映画である。「音を立ててはいけない」といった要素ひとつでここまで楽しませるのは凄い!
 この映画は意図的に「サバイバル」要素を排しているように思える。だからこそ心が休まる時がない。そもそも物語が怪物襲来から89日経った場面から描いているのも、生き延びる知識を身に着ける過程を描写しないための演出だろう。怪獣との遭遇から人類の勝利までをひとつの大きな物語とするなら、この作品はちょうど真ん中だけを切り取った小さな物語だ。つまり登場人物は急激に成長することがない。最後まで怪物を脅威として観ることが出来るのだ。
 実のところ怪物は恐ろしい存在ではない。多少の武器があれば力押しでどうにかなる。なので恐怖は演出する必要がある。「音を立てない」との掟はここで活きてくる。この呪縛に囚われている限り、怪物は無敵だ。そこかしこが轟音に包まれていれば、盲目の捕食者はどこに獲物がいるか見つけられないことを、アボット一家は気づかなかった。新聞で情報は集めていたが、『アイ・アム・レジェンド』(2007)のように敵と接触して研究することもなかった。
 文明が滅んだ終末世界では些細なものが脅威となる。サバイバル精神、と言うか知的好奇心を失った人類にとっては、『トレマーズ』のような状況もガチガチのホラーになる。これって怪獣映画の可能性を広げる助けになるのではないだろうか。

(余談)「静寂上映」とは。
 塚口サンサン劇場オリジナルのイベント上映。観客は飲食や私語を禁止された中で鑑賞する。要は「上映中はお静かに」という当たり前の企画だが、2010年代以降の鑑賞形式が参加・体験型に変化しつつある中で実施されたことを考えると中々興味深い。これは決して「第七芸術たる映画を堪能するための堅苦しいマナー」ではなく、応援上映などと同様に「観客が一体となって楽しむイベントの仕掛け」なのだ。今後こうしたイベント上映が増えるかも⁈
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