鋼鉄隊長

大怪獣バランの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

大怪獣バラン(1958年製作の映画)
3.0
購入したDVDで鑑賞。

【あらすじ】
日本のチベットと呼ばれる東北の秘境には、「婆羅陀魏山神(バラン)」なる神が信仰されていた。神の正体を暴こうとした人間たちに怒ったバランは、ついに都心を目指し進撃を始めた…。

 私事ながら今回がレビュー通算300本目。ならば今年にちなんだ作品をひとつ。2018年は東宝特撮の隠れた名作『大怪獣バラン』公開から60周年! これは書かずにいられない。
 「願わくは之を語りて平地人を戦慄せしめよ」。これは日本民俗学の開祖、柳田國男が著書『遠野物語』の序説に残した言葉だ。科学文明社会に属し怪異を信じなくなった平地(都会)人に、今も残る摩訶不思議な物語を伝えようとした。『大怪獣バラン』とは、正にこの柳田民俗学の観点で描かれた怪獣映画。これは婆羅陀魏山神の伝承である。
 しかし話はまぁ地味なこと、地味なこと。驚くほどに魅力に欠ける。実は物語の展開だけ見ると、『シン・ゴジラ』(2016)とほぼ同じ(だから僕は『シン・ゴジラ』が苦手)なのだが、バランの方はちっとも評価されていない。やはりバラダギ様の映画なのに、登場人物の大半は民間伝承を屁とも思っていないからか。聖域は簡単に踏み荒らすし、岩屋村の儀式を「バカげたこと」と断言した。さらに婆羅陀魏山神は、登場からわずか数秒にして「バラノポーダ」なる学名で呼ばれ、土着神としての神秘さを完全に失った。挙句には自衛隊の火力による雨あられである。『ゴジラ』(1954)では呉爾羅を鎮めるための神楽まで描かれていたのに……。ゴジラ研究の第一人者、山根博士が見たら嘆き悲しんだことだろう。
 しかし、この作品から60年。ついにバラダギ様にチャンスが到来した。先日予告編が発表された『Godzilla:King of the Monsters』(2019予定)にて、マイケル・ドハティ監督は、怪獣のことを「タイタンズ(Titans)」、つまり古の神々と表現した。これは正しく民俗学としての怪獣映画! 長き眠りから目覚めた旧支配者の凱旋により、地球は神代の昔に戻るのだ!! ドハティさん、あなたは素晴らしい。ゴジラ、ラドン、モスラ、キングギドラに次ぐ更なるサプライズをも示唆していたが、僕にはもう分かっている。ついにバランが、婆羅陀魏山神がハリウッドに来訪されるんでしょ!? それとも英語圏では「Titanosaurus」と呼ばれる恐龍チタノザウルスか⁉ 何にせよ公開が待ち遠しい。僕たちの大怪獣バランが、平地人を。いや、全人類を戦慄させるのだから。
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