Rick

もののけ姫のRickのレビュー・感想・評価

もののけ姫(1997年製作の映画)
4.0
 人間のエゴのために木を切り倒す、神を殺す。これほど浅ましいことはない。欲に取り憑かれた人を前に、荒ぶる巨神はただ全てを飲み込んでいく。恐れをなし、畏れを感じた人々は、ただ鎮まりたまへと口にするのみ。
 有名作ながら、何気に見たことがなかった気がする。自然と人間の関係という単純な二項対立のもとで繰り広げられると思っていたが、実際に見てみると事はそう単純ではない。大別して自然に属する側でもシシ神様、山犬、乙事主、コダマ、サンとグラデーションがあるのに対し、人間側もエミシ、たたら場、師匠連、アシタカとそれぞれの論理や考えのもとで動いている。ダークで複雑な世界が広がっていたことに驚いた次第。
 サンやアシタカよりも、エボシ御前の描き方に魅力を感じる。状況的に主人公に立ちはだかる役割を担うも、全くの悪というわけではなく、たたら場もある種の弱き者たちのユートピアとして描かれる。だが一方で自然を屈服させる工業の場でもある以上、自然側からすると悪の根城でもある。それが妙な趣深さを生んでいる。
Rick

Rick