老人の姿で誕生し,次第に肉体が若返っていく人生を送る男ベンジャミン・バトン。
結局は人生の最初(乳幼児期)と最後(老齢期)には身体的な制限があり,誰かの手を借りなければ生きていけないことにそれほど変わりはない,ということに改めて気付かされる。となると,普通の人生とは,肉体的に逆行した人生を送ったとしても,あまり不都合なことはない。それをシュミレーションしたのがこの映画である。
老齢期を迎えつつある恋人が,ベンジャミンと再開し,少年の姿になってしまったことに愕然とする。たしかに,自分と同じように老いていれば衝撃は少ないかもしれないが,肉体的にはあべこべの人生でなくても,親しい人が急激に老けてしまった,禿げた,太った,白髪になった,しわだらけになってしまったとしたら,やはりショックはあるだろう。
若返ろうが老いようが,他人の変化に衝撃を受けることに変わらないだろう。
老いることも若返ることもそう大差はない。
この一言に尽きる。
(2009年2月15日)