芋けんぴ

機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-の芋けんぴのレビュー・感想・評価

4.0
もはや夏に二、三度は見直すのが好例となっている作品。はじまりは98年。中学二年。はじめて友人達と観に行った映画がこれだった。

テレビシリーズはいっさい知らなかったが物語を察する能力には長けていたのでシリアスな設定と真面目なのかふざけてるのか曖昧な独特な世界観、そしてそこここに溢れる「夏映画」のテイストに魅了された。

見終わって僕が「いやぁ、面白かったぁ。ナデシコってこういう作品なんやね」と言うと、シリーズのファンであった友人がげっそりした顔で「違う。く、暗い。暗いよ!」と慟哭したので、余計作品が気になった。

大学生になってテレビシリーズを一度通して観たが劇場版だけはその後も円盤を買って何度も見返した。

ナデシコをある一時の仕事として割り切って思い出にもなっていない大人たちと、はじめて仲間を得て戦い抜いた日々が短いながらもかけがえのない思い出として焼き付いているルリ。

ようやく最近になってルリと、他のナデシコクルーの温度差に気付くことができた。

実はルリ以外は大してナデシコにこだわってないんだよね。大人たちにとってナデシコは転勤先のひとつで過ぎ去った日々でしかない。

でもルリにとってはナデシコは学校だったのだろう。

14歳で早くもノスタルジーに立ち会ってしまったルリの戸惑いの物語。何年経ってもこの少女の目に見えない足掻きのつたなさ、不器用さ、切なさは色褪せない。
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