劇中でタルサ虐殺のニュースが流れるに思った。
黒人たちが自分たちの町を作って上手くやってたら殺して周り、ネイティブアメリカンが迫害の末にたどり着いた土地で石油に預かったらまた殺して周り、その十数年後のドイツでもユダヤを殺し……カインとアベルの教訓は同じ民族の間でないと活かされんのか?
モリーがただただ冷静に戦いつづけるんだけど、それゆえに不憫。アーネストの愛は本物のものとして観客には届いたがそれにしたっておじをかけらも疑わず毒を注射しつづけた馬鹿だし、嫁さんの一族を殺して回っておいて、それでも嫁への愛が成立したことが理解不能。ヘイルの洗脳ゆえの行動だったとでも言うのだろうか。
さすがに全盛期ほどの狂ったテンションによる話運びとまではいかないが、冒頭でヘイルが「オセージは良い人たちだ」と言ったあとに、オセージ族の不審死が連続して淡々と語られるシークエンスはゾッとした。
テンションこそ前作のアイリッシュマンや沈黙同様終始落ち着いてるが、とにかく飽きない、ダレない不思議。映画が上手いとしか言いようがないのもわかる。
ラストのラジオドラマを使った後日談の形式からの、スコセッシ本人が登場してモリーへの哀悼が捧げられる構成は見事。しかし、そのドラマがプロデュースbyフーバーという気持ち悪さも良い塩梅の後味の悪さ。
(ちなみにこの時代にはハリウッドシネマバースにはヘイルと同じ顔したアルカポネが密造酒で儲けて、アーネストの顔したフーバーがFBI作ってんだから、数奇な繋がりで面白い)
しかし、この映画の儲けはどこに行くのでしょうか。最終的にコヨーテたちの懐に収まるのなら、何も変わらん気がするが……考えすぎか。