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ミュンヘンのRのレビュー・感想・評価

ミュンヘン(2005年製作の映画)
4.5
す…すごい…こんな悲しみの深い映画久しぶりに見たわ。ミュンヘンオリンピックのテロ事件で、イスラエルの選手殺害に関与した、パレスチナのテロ集団の11人の幹部を、ひとりひとり暗殺していく極秘プロジェクトを、チームのリーダーのアヴナーの視点から描いた最高級の力作。祖国のための報復ではあるのだが、相手にも現実に愛する家族がいたり、実際話してみると普通にいい人だったり。そいつらを残虐に殺していく過程でアヴナーのなかに名状し難い感情が生まれる。自分も子どもが生まれ家族を持つ身でありながら暗殺者であるという事実、徐々に明らかになる報復に対する報復の危険性、殺されていく仲間たち、揺るぎ始める祖国の概念。信じるべきものを見失い、自分を見失い、心を蝕まれてゆく主人公。すさまじくヘヴィな内容なんだけど、娯楽要素も高く、まったく目の離せない展開で、2時間40分の長さを感じさせないのはすごいなーと思う。ややこしい歴史的背景を知らなくてもちゃんとわかるようにできてるし、重厚な音楽にもしびれるし、無駄のないカメラワークと編集の切れ味がたまらない。時間のつなぎ方もかなり大胆、血まみれの残虐描写もナイスで、ほんとに見事なバランス。涙ながらに見終わったあと、しばらくhomeとは何なのか、何であるべきなのか、そういうことをじっくり考えさせる濃厚かつエキサイティングな一作だった。
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