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ザ・ホエールのRのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
5.0
1回目見終わった時点では4.5かな、と思ってたんやけど、翌日気になったことがあったので2回目見直してみたら5.0に変更👏👏👏 ほんまに素晴らしい! こんなに全編隅々までエモーショーンが溢れかえった映画ひさびさに見た!!! あまりにもぎっしりつまってるもんやから、117分という上映時間がマジあっという間!!! ここまで短く感じる映画もそうそうなかろうと思われる。まず冒頭からほんまに素晴らしい!!! 大学のオンライン授業で論文の書き方の講義が行われている、学生たちはみな姿が見えるが、講師はカメラが壊れているらしく真っ黒な画面でなにも映っていない。だんだん真っ黒な画面にズームインして、次のシーンでは、この講師の正体であるクジラみたいな巨体のおっさんチャーリーがノートパソコンでゲイポルノ見ながらシコシコシコっててぐおおおおおおと悶絶!!! すごい迫力でイっちゃうんですね!!! ……と思ったら違ったみたい、心臓発作だったみたい。苦しみにうめきながら、なぜか小説『白鯨』についての学生のエッセイ?を読み始めるチャーリー。仕事好きすぎか!と思ってると、そんなクライマックスみたいなシーンに突入してくるのが、たまたまそのとき部屋のドアの外に来ていた、世界の終末とキリストの到来を信じる新興宗教ニューライフ教会の宣教師トーマス。ぱっと見、大学生くらいの年齢のうぶそうなカワイイ男子で、大丈夫ですか⁈と声をかけ、ゲイポルノをチラ見してひるみかけるが、このエッセイを読んでくれ!と意味不明な懇願を受け、それを音読し終えるころには落ち着いてきたチャーリーに頼まれて、そこに居残ることに。しばらくすると日ごろからチャーリーの面倒を見ているリズがやってくる。リズがチャーリーの血圧を測ると上は230を超えており、あんたもう一週間もたないわ、と。アジア系移民で養子として育てられたリズは、父親がニューライフの強信者であり、教会のことをひどく嫌っている様子、リズ曰く、チャーリーの彼氏を殺したのはニューライフだと。だからチャーリーを勧誘しても無駄、もう戻って来るなと告げる。トーマスは、なんでそのエッセイを自分に読ませたのか、教会が殺したとはどういうことか、との問いを心に残したまま帰っていく。それは同時に我々の心に残る問いでもあった。翌日、自分の死の接近を強く感じるチャーリーは、ある人に電話をかけ、身づくろいをし始め、だれに会うつもりなんやろと見てると、自宅に迎えるのです、娘のエリーを。チャーリーは、エリーが8歳の時に、アランという男子学生と恋に落ち、駆け落ちして、妻と離婚後、アランと暮らし始めたのだった。以来一度も会っていなかった。幼くして父に棄てられたエリーは、ぐれてしまって、学業の成績も悪く、トラブルメーカーになり果ててしまっている。自分が死を迎えるその前に、エリーのために父親としてできることをしてやりたい、と奮闘するチャーリーだが、口汚くののしってまったく受け入れようとしない娘さん。果たして、チャーリーはエリーとの関係を改善することができるか……というお話。とにかく全編圧倒的に素晴らしいのが、出てくる俳優さんたちの圧倒的人間力とその演技! 特に、チャーリーを演じるブレンダン フレイザー! 270kg以上(?)ある巨体、バーコードハゲ、自分の妻と娘に激しいブロウを食らわせた挙句、彼氏が死んでもて人生のどん底、貧しい生活のなか、過食による自死を待つだけのみじめなおっさん、というすさまじい惨状の男を、説得力ある存在感で演じているにもかかわらず、まるでアニメのキャラのような無垢さをにじませ、憎めないどころか、愛おしさすら感じさせる、このスウィートさ……一体これはどういったわけか……ひとときも目が離せない!!! まじすごい。激重たい体を苦労してのっしとジマーフレームに載せて歩く姿、半裸で腹の肉をほしいままにベッドに横になる姿、吊革を片手に巨体を支えブラシでゴシゴシ体を洗うシャワーシーンなど、病的肥満の人の生活を垣間見ること自体とても珍しいため、それ自体非常に興味深いのだが、それをまったく重い暗い気持ちにさせることなく、ユーモアさえ楽しみながら、深いエンパシーと共に見れる、という圧倒的難事を可能にしたブレンダン フレイザーのヒューマニズムに、深い深い感動を覚えずにはいられない。そして、自暴自棄な彼の生きざまにフラストレーションをぶつけながらも、まるで母ちゃんのように彼を助け、いたわり、愛するリズを演じるホン チャウも、愛する人をふたりも失わなければならないにもかかわらず、決してケアすることをやめないそのいじらしい姿に胸をうたれます。それがラストのすさまじいエモーションの揺さぶりにつながっていくのですが、車いすのときのピーッピーッピーッには笑った🤣👏 このふたりの人間力がとにかくすごい!!! ほんま釘づけ! そして、この最高のふたりに支えられて、さまざまにぎこちない感情を表出させる若者ふたりを演じたセイディー シンクとタイ シンプキンス。エリーは、表層のはげしい憤りの奥に、昔めちゃくちゃお父さんのこと好きだったんだろうなと思わせるヒントがいろんなシーンでうっすらだが明確に現れるのが素晴らしかった。そのニュアンスが哀しい上、8歳の頃に人間がクソということを教えられ、それなら自分もクソでええわと割り切ろう頑なになってる姿に胸が痛む😖 プチ俳人なのもポイント高い。そして、ニューライフのトーマスに関しては、自分の信仰に対するまっすぐな気持ちを失って組織と共に形式主義に陥っていくことを避けようとしてる、その健気な様子に共感する一方で、他の人たちが宗教に対して抱える気持ちに対して無鉄砲な無配慮、無遠慮なのが、若さだなぁ、うんうん、と、見守るような視線で見てました。チャーリーとベッドルームに向ける視線を交わすシーンおもろかった🤣 胎児て🤣🤣🤣 さらに、もうひとり、サマンサ モートンがまた素晴らしいんすよ! 素晴らしい! 泣ける! いっそ心の底から憎みきってしまえば楽なのに、あまりにとつぜんのことで自分の気持ちなんて全然変わってなくて、好きで、愛してて、どうしようもない。喘鳴を聴くシーンは本作の数多くの名シーンの中でひときわ輝いてる。人間くせえ、どこまでも人間くせえ、どいつもこいつも、どうしようもない人生なのに、どうしようもない人生だから、愛おしくてしょうがない。胸がちぎれそうなほどに! そんななかにちょいちょい現れる善意に溢れたピザ配達人の顛末……なにもかもが、エモーショーンが、詰まりに詰まってる!!! すごすぎる! みんなが自分らしく自分の生を生き、自分の真実の気持ちを自分の言葉で話し、なおかつだれしもが幸せに暮らせることを願わずにいられない!!! あと、音楽もね、とおくからうねりながら胸に迫ってくる波のような音楽も最高!!! そして、監督ダーレン アロノフスキー!!! 得意のじわじわクレッシェンドからうおおおおおおおと高まりしまいにはエクスポネンシャルにエクスプロージョンさせるエモーションのサージに吞み込まれパァーーーッと頭の中まっ白……過去作のいくつかのそれに匹敵するか、さらにはそれらを超えていくくらいの勢いで昇華、エンドクレジットでははげしく流れる涙が止まりませんでした😭😭😭 スゲー。まじスゲー。ほんますべてにしびれた! ひさびさにここまでしびれた! 最高でした!!! まだ見られてない方には、猛烈にお勧めしたいです! 画的にはうす暗くて地味な映画なんやけどね! 汚いシーンもいっぱいあるんやけどね! みんなの人間くささがあまりにも愛おしく美しかった!!! 既にもう一回見たい欲が高まりに高まっている!!!
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