山岡

女王陛下の戦士の山岡のレビュー・感想・評価

女王陛下の戦士(1977年製作の映画)
4.1
ナチス占領下のオランダのレジスタンスの闘争を描いた作品で、後年の『ブラックブック』に通ずる作品。俯瞰で歴史を語るのではなく、歴史の中で翻弄される主人公を中心とした複数の登場人物の人間ドラマを描いているので堅苦しさは無い。

終戦直前にオランダ女王が亡命先のロンドンから自国に帰還するアヴァンから威勢のいい音楽が流れるオープニングタイトルで一気に引き込まれる。序盤の学園青春映画的なパートで彼らの無邪気な友情を丁寧に(しかしテンポよく)描き、これが後の展開における感情移入に重要な役割を果たしている。また、開戦前夜、ナチスの足音が聞こえているにもかかわらず弛緩しきったオランダ人たちの様子は現代の日本人にも通づるようで観ていて胸が痛かった…。ドイツによる攻撃が始まって以降はエリックとその友人たちの生活は激変。レジスタンスとしてナチスに抵抗する者、ナチスに進んで加担していくもの、ナチスに処刑され死んでいく者、ユダヤ人婚約者を守るため仲間を裏切る者、そして女王陛下直属の部隊としてスパイ活動を行うエリック…それぞれが様々な立場に分かれ、戦争に参加し、死んでいく…ラストでエリックが集合写真を手に取るシーンの『アメリカン・グラフィティ』ばりの切なさよ…この切なさは戦争映画と言うより、やはり青春映画だと思う。

学生寮の先輩の可愛がりで頭から食事をぶっかけられたり、エリックがクソでメッセージを書いたり、空襲の影響で人の足がもげたり肉片が飛び散ったりするシーンだったり、女王陛下の見えるところでセックスしたりだとか、色々ショッキングなシーンはあるが、基本的にはエロ・グロは少な目で割と万人向けの映画だと思う。超面白かった。
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