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サタンの書の数ページのTSのレビュー・感想・評価

サタンの書の数ページ(1919年製作の映画)
3.5
【人間になりすますサタン】75点
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監督:カール・テオドア・ドライヤー
製作国:デンマーク
ジャンル:歴史
収録時間:157分
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カール・テオドア・ドライヤーの大作。どうしても気になり5000円ほどで購入。このあたりの作品は、版権が切れてるにも関わらず容易に見ることができないので歯がゆい。ムルナウ も然り、このあたりの作品がさらに見やすくなれば嬉しいのですが。。さて、今作は4部構成でして、イエスがいたイェルサレム、16世紀のスペインでの異端尋問、フランス革命、20世紀初頭のフィンランドで構成されています。各35分程度なのですが、現代編のフィンランドは異様な数のカット数であり、どうやらドライヤーはこの現代編に最も力を入れていたのではと思わされてしまいます。

サタンとは言わずもがな堕天使のことであり、さまざまな手段を用いて人間を誘惑していくという存在であります。今作においても人間になりすましたサタンが人間を陥れていくのですから面白い。個人的に面白かったのがフランス革命のパート。あらゆる人がギロチン送りになる中、富裕層の人たちはこの事態をどう捉えたのか。優れたモンタージュ技法によりそれがひしひしと伝わってきます。また、あまりにもギロチン斬首が社会現象になっていたため、子どもたちですら「ギロチンごっこ」をしていたということには驚きでした。

ドライヤーはグリフィスの『イントレランス』を鑑賞して強い影響を受けたと言われています。確かに『イントレランス』も今作のように4部構成でして、同作は映画史に残る傑作なのですが、ドライヤーはこのようなパート構成にサタンを登場させ、サタンに操られていた人間が、現代編でついに打ち勝つというプロットをつくりあげるのです。サタンの誘惑に人間が打ち勝つというのはどういうことを示すのか。個人的な見解ですが、当時の情勢も考えて、絶対的な存在に一民衆が打ち勝つというのを表現しているのかと思えます。人間が初めて悪しき存在に打ち勝つ。そして人間は成長し続けるということを示しているのかもしれません。

簡単には鑑賞できないかもしれませんが、見ても良い作品かも。個人的にはもう少しインパクトが欲しかったところであり、無難にこのスコアです。ドライヤーの作品はまだ多く鑑賞できていないので、どんどん見ていきたいですね。
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