サタンの書の数ページの作品情報・感想・評価

サタンの書の数ページ1919年製作の映画)

製作国:

上映時間:157分

ジャンル:

3.9

「サタンの書の数ページ」に投稿された感想・評価

甲冑

甲冑の感想・評価

4.5
四時代に渡る人間の背信行為とサタンの劫罰を描く内容であるが二作目にして160分もの重厚な出来栄えに圧倒(ビアノの人も大変だな〜)。後の霊妙さはまだ弱めだがこの手の題材とドライヤーの相性は抜群で特に2話目のスペイン異端尋問は冒頭の拷問部屋からして禍々しくてブチあがる。キリストと大群の羊のカットにはブレッソンもこれを観ていたのかなと想像した。
lemmon

lemmonの感想・評価

3.8
堕天使の解釈。


人間を誘惑し、悪行へと導く。
堕天使は最初から悪魔だったわけではなく、人間の不幸を見せ続けられる罪を犯された天使として存在する。

神様の究極のサディスティックな行為にも思えるが、この堕天使から人間の誘惑に耐える姿を、とても面倒な回り道で美化させているようにも思った。

その発想にやられる。
サイレント映画であるがゆえに、その内容についていけた。役者が自己陶酔に見えると一気に冷めそうだが、トーキーではないので、自分の頭の中で落ち着いて画面を追うことができた。


4部構成。
いずれも見所ありの細部までこだわった作りには感服。100年前の作品こその美しい画角の捉え方。

ラストはあっさり。
人間の世界に紛れ込む堕天使。
次の時代はどこに紛れているのか?
彼を探す楽しさも。

ただ、長い、、、😅


※戯言
女は皆、ふくよか。お顔立ちも今だととても美しい女優とは言えん。特にマリーアントワネット役は酷い。4部目の脇役の女の子は可愛かったが。ただアントワネットって私服を肥やした究極な存在な訳で、ある種の醜さを表現でもしてたのかも?深読み(笑)


ドライヤー監督、スゴイわ。
タイトル意味深。
堕天使の苦しみはこんなもんじゃないのだろう。
ドライヤーの2作目の監督作。グリフィスの『イントレランス』に影響を受けた形式。各年代におけるサタンの誘惑を描く。キリスト編、スペインの異端審問編、フランス革命編、1918年のフィンランド(現代)編の4つのエピソード。サタンは様々な人物に成りすまし、男達を堕落させるが、最後女性だけがその誘惑に打ち勝つのが印象的。子供達が猫を相手にギロチン刑ごっこをする場面もドライヤーっぽくて好き。
全ショット動く絵画のよう

ドライヤーの描く現代はとかく、動、だった
AS

ASの感想・評価

4.4
これはスクリーン案件。あまりにも厳格な構図に脳髄が揺さぶられる。
高潔さへと帰着を見せつつ、いつの時代も悲劇は反復されてしまう事が提示されるわけだが、抵抗の姿に美を見出だす事で精神が浄化されていく感覚。
何百年も経て普遍性や批評性を帯び、思想や信念を踏み絵にかける。まるで観る者を試しているかのよう

自宅でサイレント映画
Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

4.0
‪「サタンの書の数ページ」‬

冒頭、エルサレム。
堕天使サタン。人間を誘惑、社会に悲劇的な出来事を齎す。原罪、スペインの異端尋問、フランス革命、イエス・キリストの物語、悪の力、ユダ。今、4つのエピソードで3つの歴史をひもとく…

本作はカール・テオドール・ドライエルの長編2作目にして150分超えの超大作である。

この度、初見したが傑作である。

まず物語は悪の根本的問題を時代も場所も異なる4つの物語を要して描いた作品で、堕天使サタンが神からの命令によって地上に住む我々人間を誘惑し、悪事を働かせると言う永遠に続く職務をひたすら行わなくてはいけない不自由な運命を特徴的なカメラワークを含み描いていく。

それは時には大胆に写し出され、観客は傍観者として、この事柄を遠くから眺めるしかないのである。

素晴らしい作品には違いないが、グリフィスの「イントレランス」にかなりの影響受けているような映像構成である。

4つのパートをそれぞれ独立させている点も面白い。前作の「裁判長」より遥かにレベルアップした本作品を見てしまうと、たった1年でここまでの大作を作ってしまうドライヤーの才能に恐ろしさを感じてしまう…いい意味で。

因みに先ほど述べたイントレランスの映画以前に本作の脚本はホイヤーの手によって執筆されているので、後追いした形ではないのがわかる…

グリフィスの作品に影響がある事は確かだが。

そもそも原作は英国人作家のコレッリのベストセラー「サタンの嘆き」をモチーフにしている様だ。面白いことに1926年にはこの上記の小説をグリフィス自身が映画化していると言う…まだ見た事がないがイタリア映画の「失楽園のサタン」もかなり影響受けている作品らしいから鑑賞したいが国内には無さそうだ。

この映画最後の晩餐じゃないがイエスが杯を祝福するシークエンスの圧倒的な画作りに驚くし、役に憑依した役者(まるでその登場人物の息の吸い方までを真似たかの様な)の徹底ぶりには感動するし、表現力、演出力は凄まじく、‪ワンシーンだがイエスが羊に囲まれている場面はすごく印象に残るしカメラワークも卓越していて文句のつけどころのない1本だ。

森に出かけるイエス一行を映した場面も素晴らしい。

さて、4つのエピソードの第1話は「紀元1世紀のパレスチナ」2話「16世紀のスペイン、セヴィリア」3話「フランス革命」4話「1918年のフィンランド」となる。

本作の驚くべき出来事の1つにサタンが人民委員に化けて、無実の人間を破滅させようとする下りがあるのだが、(しかも赤軍とサタンの間で共謀する)その場面を見るとドライヤー自身の生い立ちを知っている分、納得はできる。

結局、弱者に味方する監督のイデオロギーが表示された場面だと思わされた。

だからブルジョワを毛嫌いしていたりするエピソードがあるのだなと思う。

特にマリーアントワネットを象徴するフランス革命のエピソードなんて壮絶である。

4話ではソヴェートを批判しまくってるし…。

余談だが、似た時期にF.W.ムルナウも「サタン」って映画を作っていた様な…。

それとこのような題材を映画化するにあたって必ず攻撃はされるものだ今現在も。

もちろんドライヤーのこの作品もプロテスタントの牧師が冒涜であると非難したらしい。

そして日刊紙が一斉に容認できないとレッテル張りをし始める…

宗教と革命と言うイデオロギー的対立が背景にあることを知った上で、本作を改めて鑑賞してみたいと思う。

そうすると新たな発見が見つかるかもしれない…。‪

エピソードごとに変化していく音楽の感受性も素晴らしく、絵画的な映像とマッチする。

これは正しくドライヤー監督の記念碑的な作品になること間違いない…というか既になっている。まだ未見の方は是非お勧めする。‬
TS

TSの感想・評価

3.5
【人間になりすますサタン】75点
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監督:カール・テオドア・ドライヤー
製作国:デンマーク
ジャンル:歴史
収録時間:157分
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カール・テオドア・ドライヤーの大作。どうしても気になり5000円ほどで購入。このあたりの作品は、版権が切れてるにも関わらず容易に見ることができないので歯がゆい。ムルナウ も然り、このあたりの作品がさらに見やすくなれば嬉しいのですが。。さて、今作は4部構成でして、イエスがいたイェルサレム、16世紀のスペインでの異端尋問、フランス革命、20世紀初頭のフィンランドで構成されています。各35分程度なのですが、現代編のフィンランドは異様な数のカット数であり、どうやらドライヤーはこの現代編に最も力を入れていたのではと思わされてしまいます。

サタンとは言わずもがな堕天使のことであり、さまざまな手段を用いて人間を誘惑していくという存在であります。今作においても人間になりすましたサタンが人間を陥れていくのですから面白い。個人的に面白かったのがフランス革命のパート。あらゆる人がギロチン送りになる中、富裕層の人たちはこの事態をどう捉えたのか。優れたモンタージュ技法によりそれがひしひしと伝わってきます。また、あまりにもギロチン斬首が社会現象になっていたため、子どもたちですら「ギロチンごっこ」をしていたということには驚きでした。

ドライヤーはグリフィスの『イントレランス』を鑑賞して強い影響を受けたと言われています。確かに『イントレランス』も今作のように4部構成でして、同作は映画史に残る傑作なのですが、ドライヤーはこのようなパート構成にサタンを登場させ、サタンに操られていた人間が、現代編でついに打ち勝つというプロットをつくりあげるのです。サタンの誘惑に人間が打ち勝つというのはどういうことを示すのか。個人的な見解ですが、当時の情勢も考えて、絶対的な存在に一民衆が打ち勝つというのを表現しているのかと思えます。人間が初めて悪しき存在に打ち勝つ。そして人間は成長し続けるということを示しているのかもしれません。

簡単には鑑賞できないかもしれませんが、見ても良い作品かも。個人的にはもう少しインパクトが欲しかったところであり、無難にこのスコアです。ドライヤーの作品はまだ多く鑑賞できていないので、どんどん見ていきたいですね。
mrhs

mrhsの感想・評価

4.0
あまりに厳格な100年前の映画。

数ページというタイトルなのに2時間半。これは拷問か、それとも眼福か。

ノイズやフリー・インプロヴィゼーションを聴いた後にソニック・ユースを聴くと、ソニック・ユースがとてもキャッチーな音楽に感じられるが、それと同様にドライエル(ドライヤー)の映画を観るとベルイマンやタルコフスキー、アンゲロプロスですらとても親切な映画に感じられる。
菩薩

菩薩の感想・評価

4.9
イエスを売るユダ、若き色香から逃れようともがく僧侶、元は忠実なる召使いでありながら保身に走るジャコバン派党員、その妻を奪おうと友人を密告する男。様々に姿を変え、それぞれの時代、それぞれの方法で、そんなか弱き人間たちにそっと忍び寄る悪魔の影。神に歯向い人間を貶める宿命を課されたサタンの嘆き、サタンの誘惑に負け堕ちていく者、その裏切りにより破滅していく者たちの姿、人間の弱さと狡猾さ、裏切りと悪意の蔓延を描いた四編からなる作品。この国からトリアーみたいな監督が生まれた事がなんだか必然だった様な気すらさせる作品。減点は絶世の美女であるはずのマリー・アントワネットが女装したザキヤマにしか見えないため。まぁでも、キルスティン・ダンストもなかなか…。

正直一番可哀想なのはサタンだったりする。彼がその呪縛から解かれるには彼の誘惑を退ける人を見つけるしかないが、それに失敗すればより一層サタンへの恨みは増していくという無慈悲なシステム。神はやっぱり鬼畜だ。第2章に出てくる異端審問の拷問室がゾクっとする、久しぶりに明大の拷問博物館に行きたくなった。