[あらすじ]
罪を犯して死んだある人間の魂が、魂は転生のチャンスを得るための試練ということで、自殺を図って死んでしまった中学3年生のマコトの身体に乗り移ることになった。
マコトは身体が小さく、学校では友達もいなく、いじめられており、また家族も一見平凡そうに見えるものの、ドロドロしていた。
マコトに乗り移る罪を犯して死んだ人間の魂というのは、記憶を消されたマコト本人の魂である。要は、自殺した中学生が記憶を消されて生き返り、ボス(神)の使いの手助けけを借りながら、友達をみつけたりして、前向きに生きなおす、という話。
いわゆる「いい話」が過ぎてしまい、教育的アニメ作品までいってしまっている。メッセージ性がストレートすぎると、鼻についてしまう。
生き返るというSF的要素以外は、画も物語における人物描写もリアルに描かれており、実写映画でも成立すると思う。(実写作品はあるらしい。)
よくよくこのストーリーを考えると、リアルであることが、いいとは限らない。母親の不倫や同級生の援助交際の話も、ディテールに凝ってリアリティをもたせられてしまうと、観ていて痛々しい、というか不快である。それがマコトへのシンパシーにつながるのだが。
マコトは家族に思いの丈をぶちまけるシーンがあるのだが、肝心の母親との和解のシーンがない。これを伏線の未回収にも思えるが、この問題を簡単に解決させてしまうと、リアリティが薄れるのだ、母親との問題は理屈ではなく、話し合って解決できる問題ではない。むしろ生理的な嫌悪感。リアリティと生々しさは紙一重。
一方、マコトが密かに想いを寄せていた、実はエンコウしていたというヒロカは、咎められることもなければ、はっきりと悔い改めることもない。教育的な作品の割には、この伏線の未回収はどうなんだろう。
道徳的な話なんだろうけど、ドロドロしていて微妙な作品だった。
途中でアンジェラ・アキの『手紙~拝啓 十五の君へ~』が流れてきて、
まさにこの歌の世界観そのものであった。
(2011年1月30日)