茶一郎

翼のない天使の茶一郎のレビュー・感想・評価

翼のない天使(1998年製作の映画)
3.2
 『シックス・センス』から大どんでん返し監督として一躍脚光をあびるも、『ヴィレッジ』の盗作騒動、『レディ・イン・ザ・ウォーター』製作中のディズニーとの契約違反、そして『ハプニング』以降は目も当てられない惨敗作を連発していたM・ナイト・シャマラン監督の長編監督デビュー作が今作『翼のない天使』。
 物語は、最愛の祖父を亡くした主人公少年が神学校で神様を探す冒険をするというもの。上述の通り、すっかり「大どんでん返し監督」の印象が強いM・ナイト・シャマラン監督だが、今作を見れば彼の作品は「物語を語るということ」そして、また「世界の真の仕組みを知る」ということと「世界における自分の真の役割を知る」ということを一貫して描いているということに気付く。
 原題の『Wild Awake』の通り、彼の作品では決まって登場人物たちの「目覚める」様子が描かれる。つまり、シャマランの「大どんでん返し」は、あくまで「真の世界へのWild Awake:目覚め」から来るものであり、「自分が主人公となり語られるべく物語に気付くこと」を描き続ける強い物語信仰者シャマランに言わしてみれば、そもそも登場人物たちが自分の「物語」に気付くことが彼の作品のゴールなのでそれまでの過程が少々御都合主義でも仕方がないのかもしれない。

 さて、そんなM・ナイト・シャマランも近作『ヴィジット』、『スプリット』と完全復活の兆しが見え、次回作では『アンブレイカブル』の続編にして『スプリット』と同じ世界観の作品を作るという、マーベル・シネマティック・ユニバースならぬ一人「M・ナイト・シャマラン・ユニバース」を作ろうとしているなど絶好調である。【短】
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