茶一郎

夜明けのすべての茶一郎のレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.5
 「絶対にこの映画は私を受け入れてくれる」と観客に確信を与える優しい映画世界。生きづらさを抱えた二人にカメラは適切な距離感を保ち(劇中登場する中学生のドキュメンタリーのように)、優しく見つめ、決して二人を同情的に描いたり、メジャー作品お決まりのロマンスで消費したりしない。
 二人が出会う下町の中小企業は、『ケイコ 目を澄ませて』のボクシングジムを思い出す彼らを保護する聖域のように美しい。「冷たい大企業 VS 温かい中小企業」のようなありきたりな二項対立も無く、徹底的にこの映画は優しい映画世界を構築していて心地が良かった。
 『ケイコ 目を澄ませて』から続く16ミリで撮影された夜景。ヒーリングミュージックのような劇伴。暗闇の中で光を取り戻す個人個人=星々を、星座のように線で繋ぎ、かけがえのない輝きをフィルムに刻み込む、映画それ自体がプラネタリウムのような癒しと優しさに満ちている傑作だった。【記録】

*Podcast「映画世代断絶」でも話しました。
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