茶一郎

ボーはおそれているの茶一郎のレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.2
 大人になったのに鎖のように硬い “へその緒” がまだ自分に付いている感覚……帰省のため実家に向かう時の足取りの重さが自分と重なった。まさしく学生時代、実家から送られてくる冷凍食品とお米で腹を満たし、家賃も出してもらっていた過去の自分は紛れもないボー。「自分はボーではない」と言い切れる観客は少ないのでは。
 映画が始まってから3時間、母胎、羊「水」の外に一歩も出られない男の主観的な神経症的スリラー。フロイト的な自己分析ミステリーでもあった。
 ボーが画面上で運動を始めると、すぐにその運動は “何か” によって中断される。キッカリ40分毎にトーンとジャンルが切り替わるこの構成は、ボーの今までの人生を表しているかのよう。親を憎みながらも、親に愛を返せていないと、愛憎に板挟みになった子は自分を罰することでしか前に進めないと思う。【記録】
茶一郎

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