ネブュラー

下女のネブュラーのレビュー・感想・評価

下女(1960年製作の映画)
4.6
「女が階段を上るとき」と同年に製作された韓国映画「下女」。
こちらも階段という舞台装置を巧みに利用し、上昇、下降、支配の構図を見事に表現する。
偶然なのか、子供の足が悪いという点も共通点として挙げられる。どちらかが影響を受けたのか?

イ・ウンシムの下女が、「悪い種子」で描かれるような血族的悪なのか、
国民性による上昇志向の極端な表れなのか、興味深いところだが、いずれにしろ相当な悪女だ。
悪女描写もぬかりなく、舌をぺろぺろ出す仕草、ネズミを平気で扱うさま、鍵盤をたたき不協和音を奏でるさま。
この女、挙動がおかしい。ポンジュノ「パラサイト」にも影響を与えているという話だが、この女が足を絡めるシークエンスなんて、まさにパラサイトの如し。
家庭の崩壊をもたらす異物であり、最初から最後まで本当に憎たらしい。

はじめに挙げたような空間の使い方も素晴らしく、1階は家庭としての空間、2階は不義理の空間として機能する。
下女も下→上から上→下と階段移動するようになり、家庭という空間を支配する構図を作り上げる。

うまいのが娘の存在。
足が悪く、基本的には出来事を見守り、またはなすが儘に受け入れるしかできない状況なわけだが、まさに観客と同調する立場として、緊張感を高めてくれる。
60年代初頭から、これほど面白い作品が韓国にもあったのかと感嘆。
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