むっしゅたいやき

不安は魂を食いつくす/不安と魂のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

3.8
孤独と愛、障害に就いて。
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー。
老年の孤独な女性と移民のモロッコ人男性とのメロドラマである。

「考える、よくない。考える、泣くだけ─。」
台詞の印象的なこの作品は、メロドラマを通して当時(現在、更に過酷になっている)のドイツ社会の、二つの問題を直視したものである。
一つは核家族の解体に因る、そして移民その物による孤独感。
もう一つが移民への差別、─時として排斥─感情の増幅である。
この二つの障害は、主人公の二人を強く結び付けるが、それが緩和された時、互いの価値観の相違を認め合う事が出来るか、をファスビンダーは問うている。

「不安は魂を食い尽くす」─。
そもそもタイトル、この警句は、誰に向けた言葉なのであろうか。
「差別」とは不安感から出る物である。
そう考えれば、「不安に喰われた人々」とはどの様な人々であるのか、本作で云う誰に該当するのかは自明であろう。
作品内だけで“良かった”と完結せず、我々鑑賞者もしっかりと受け止めたい警句である。
むっしゅたいやき

むっしゅたいやき