roofbalcony

リミッツ・オブ・コントロールのroofbalconyのレビュー・感想・評価

3.5
ジャームッシュ補習週間第3弾 。
まさかジャンル映画ではあるまいと思っていたがこれほどの映画がくるとは。面食らった。油断してた。 大昔に「パーマネント・バケーション」を見た時の感覚に引き戻された。自分の感性が鈍りきった事も大きいと思うが。
主人公ローンマン、彼の主義、見聞きするもの、手にするアイテム、出会う人々、これらが意味するものを紐付けるリテラシーを鑑賞者が有していればテーマをはっきり認識できるのか?寓話とみなせば政治・社会問題的啓発が隠されている雰囲気はあるが。とはいえ標的の「どこででもヘリを飛ばすアメリカ人」を「想像力とギターの弦」で・・・はメタファーとしてド直球+ビル・マーレイが急に台詞で説明しだすしで却って飲み込みにくくもある。「ブロークン・フラワーズ」と立て続けに観たのでこのシーンで緊張の糸が切れて笑ってしまった。でも「想像力を使った」はとてもカッコイイ。
クリストファー・ドイルの画作りはドラマほど禁欲的でなくすばらしい。が、自分にはスペインの風景がファンタジック過ぎて、所々知人に見せられた観光写真とダブってしまった。
期待していたアレックス・デスカスは重要な役ではあるが出番は短くて残念。脇役は皆同じくらい短めだけども。

舞台:出発地の空港はたぶんフランス→スペイン・マドリード、セビリア、アルメリア、タベルナス、マドリードに戻る

***
以下、無粋を承知で気になる要素、アイテムなどをメモ
・依頼人クレオールが掌で弄んでいる目玉のような石?が何なのかとても気になるが判らない。「クレオール」とは奴隷制や植民地社会を背景にした異なる人種・言語・文化などの混交現象またはそれそのものを指す言葉、であるらしい。蔑称的なニュアンスを含むとのこと。
・各地で接触する「仲間」たち、彼らが象徴する要素はそれぞれ、音楽、性欲、映画、科学、芸術とボヘミアニズム、古来の幻覚剤文化。
・何かの情報が記された紙片の入ったマッチ箱。ラベルにはLE BOXEURと書かれてある。小さい文字はおそらくFABRIQUE AU CAMEROUN(カメルーン製)。ローンマンが最後に着替えるジャージにはカメルーン国旗を模したマークがついている。
・マッチ箱の例外としてブロンドから受け取ったそれには情報ではなくダイヤが入っており、これと引き換えにヌードから情報入りのマッチ箱を入手する。彼女らが象徴する要素を代入してみると興味深い。この中身の紙片をローンマンが食べる件はない。
・セビリアのトーレ・デル・オロ(黄金の塔)。ミニチュアのテーブルランプ、絵葉書の写真、実物が登場。これはかつて城壁の望楼、植民地から略奪した宝物の保管庫(異説あり)などの来歴から推して、標的がいる要塞化された建物を示唆するものか。現地の部屋にもミニチュアがいくつか置かれている。
・ヅラを外して髑髏に被せるビル・マーレイ。

・「ヌード」役のパス・デ・ラ・ウエルタは「サイダーハウス・ルール」で主人公に恋心を抱いているらしき孤児院の少女役だった。
roofbalcony

roofbalcony