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アングスト/不安のRenのレビュー・感想・評価

アングスト/不安(1983年製作の映画)
3.5
やっと観ることができた。ホラーでもグロでも歴史的傑作でもなく、まさしく「異常」な珍作。一人の男がある一家を殺害してもたもた処理するのを1時間半見るだけの映画だったが、意外にも飽きずに観られた。

実際の殺人がスマートで短時間で終わるわけもなく。こっちの人間の手をドアノブに括り付けたらそのまま一思いにヤればいいのにターゲットを変更し別室へ移動。この映画の殺人鬼にあるまじき手際の悪さに苛立ちます(犯人が統合失調症故?)が、それは同時に、人間がスパッと死ぬところを見せろ!という観客の無意識の異常性をも炙り出す。スカッとさせないことで観客も異常だと気付かせる『ファニーゲーム』的な構造。

観たからと言って損も得も無いような映画だけど、普通なら絶対に見ることのできない異常者のリアルな犯行現場を覗き見できるという一点において、興味をそそられる内容ではあった。
勝手に他の名作サイコパス映画を引き合いに出して、猟奇的殺人者はこうあるべきだから今作はダメ!としてしまうのはちょっとナシな見方だとは思う。

あとこの映画、環境音が異常なまでに大きい。水の音や足音や咀嚼音など、別に聞かなくてもいい音を聞かされる不快感も相まって、とにかく異様だった。
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