すずき

フリーウェイ/連鎖犯罪 逃げられない女のすずきのレビュー・感想・評価

4.4
娼婦の母とヤク中の継父と暮らす、ケーキの切れない非行少女バネッサ。
ある日、両親が逮捕され、彼女は行くあてを失ってしまう。
誰も助けてくれない彼女だったが、死んだ父親の、会った事もないお婆ちゃんの存在を思い出す。
彼女はお婆ちゃんに会う為、恋人から餞別に渡された拳銃を手にして、故郷を飛び出した。
途中、高速道路で親切な児童カウンセラーのボブと出会い、彼の車に同乗する。
車内でボブのカウンセリングを受けるが、やがて彼はサディスティックな本性を表し…

元々の邦題は「連鎖犯罪/逃げられない女」だったが、後に原題の「フリーウェイ」が追加。
そのせいでタイトルが渋滞起こしてる(フリーウェイだけに)。
しかもどのタイトルもB級サスペンスのような文句で、どうにもパッとしない。
そのせいか埋もれてしまった本作だけど、実はなかなか傑作なのでは。

ストーリーは、童話「赤ずきん」を現代に置き換えて換骨奪胎したもの。
逆「ヒッチャー」のようなサスペンスになるかと思いきや、二転三転するストーリー展開に驚かされた。
ネタバレは興が削がれるので、ストーリーに関してはここまで。

主人公バネッサは札付きのワル。
現実世界でもこういった輩はいて、日々、新聞記事の一面を賑わせている。
彼らを見て「自分ならそんな選択はしない、こいつは生まれながらの悪でゲロ以下の臭いがプンプンする」と言う人もいるだろう。
しかし、それはある程度マトモな境遇を経た結果の、現在の自分からの一方的な物の見方だ。
バネッサのように、マトモな教育さえほとんど受けられず、本来自分を助けてくれるような立場の人でさえ裏切り傷つけられる。
もし、そんな境遇を歩んだ自分がいたとしても、現在の自分と同じ判断を下せるだろうか。

ひとつ印象的だったのは、両親を逮捕してバネッサの前から連れ去った警官との会話。
警官はバネッサに「こんな所は良くない、ここより良い環境がある」と言って児童福祉施設を勧める。
だが、施設と里親の元を転々としたバネッサは知っている。他人を無償で、心から助けてくれる人などどこにもいないのだと。
そこでバネッサは「じゃあアナタの家に住まわせてよ、家事はするから」と警官に言う。
警官から欺瞞的な笑顔は消え「それは嫌だ」と言われてしまう…。
偽善の仮面を剥ぎ取るような描写は他にも多く、それには製作総指揮のオリバー・ストーンの捻くれた社会批判精神が表れているのかな。

そんな暗くなりがちな内容だけど、それでも滅茶苦茶に足掻いて強く生きようとするバネッサが、映画に少しの明るさを添える。
そして日本語吹替は実写映画には珍しい林原めぐみが演じており、多少アニメっぽさもあるが、元気な声と演技がキャラクターに合っていた。
対する悪役のボブは大塚明夫による吹替で、善人の仮面を付けたドクズかつ小物の、声の演じ分けが上手い!