ひでやん

突撃のひでやんのレビュー・感想・評価

突撃(1957年製作の映画)
4.0
若きキューブリックが、第一次世界大戦の独仏戦を軸に映し出す戦争の矛盾と不条理。

塹壕戦が膠着状態にある中、ドイツ軍の堅個な陣地を占拠せよという命令が、大将から将軍、将軍から大佐、そして部下へと下される。司令部は豪邸でふんぞり返り、兵士は塹壕で泥まみれ。その対比は天国と地獄である。

カーク・ダグラス扮するダックス大佐は無謀な作戦に抗議するも一蹴され、作戦は実行。かくして熾烈を極める突撃がはじまる__。塹壕を奥から手前へと歩く大佐、その狭き道を進む一人称視点。ドリーショットで映し出す大佐の姿は凛々しく、カメラの縦移動が実に滑らかだった。

そして臨場感あふれる突撃シーン。絶え間なく降り注ぐ爆撃と銃弾、鳴り響く重低音の爆音。その中を這って進み、銃弾に倒れる兵士たちを捉え続けるカメラ。その平行移動する長回しのドリーショットが凄まじい。

散って勇敢、退いて臆病。生きるも死ぬも地獄の兵士。ミロー将軍に「お前が行け!」と言ってやりたい。生き延びた兵士たちは敵前逃亡の罪となり軍法会議にかけられる。「上司の命令は絶対服従」なんて言うと、現代ではパワハラになるが、表に出ない支配力は沢山あるんだろうな。

前半の塹壕から一転して、後半で描かれる軍法会議は、弁護人として部下を守る大佐が唯一の正義となる。気骨のある大佐は組織に敗北し、選ばれた3人の兵士は処刑となる。明日死ぬ人間と明日も生きているゴキブリという命の対比がやるせなかった。画面の奥行きと、随所にあるシンメトリーの構図を29歳の若さで確立させたキューブリックに脱帽。
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