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裏切りのサーカスの655321のネタバレレビュー・内容・結末

裏切りのサーカス(2011年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

とても難解な映画。
今、何をしているのか分かりづらい構成に加えて、キーになるような台詞が深遠な表現なため一層難しくなっている。

そんな台詞の一つ、
「僕がアンの愛人になれば判断が曇ると思った。その通りだった、ある時点までは。」
についての考察。

ビル本人が「君も気付いていた」と言っていたことからも、「ある時点」以前からスマイリーはもぐらの存在に気付いていたのは明らか。
では「ある時点」はいつか?
私はスマイリーがカーラの存在を感じた瞬間からだと考える。
具体的にはコントロール宅で自分も疑われていたことを知った時と(その後すぐにカーラを自分と同じクイーンの駒で作り盤上に置いた)、コニーに「あなたはどうかしら。私はセックスに飢えてる」と言われてから。

スマイリーは妻アンとの関係に疲弊していた。もちろん間男がビルであることにも気付いていた。
スマイリーはセックスの相手を求めていた。その相手こそカーラだ。
アンとは違い、お互いが向き合った関係。
同性愛的な匂いが立ち込めているこの映画の中でこの関係を愛と言っても違和感は無いと思う。
要するにビルはアンの間男でもあり、カーラの間男(のようなもの)でもあるのだ。
スマイリーはアンとの関係においてビルを追い出すことは出来なかった。それはアンとの関係が壊れる可能性があったから(他人から見たら既に壊れているが)。だから間男でありもぐらである事を薄々気付いていたものの、一歩踏み込んだ判断が曇ってしまった。
カーラとの関係は違う。それなのにビルが「私はカーラの雑用係ではない!(都合のいい男ではない)」と宣うので「じゃ何なのだ?」と激昂するのだ。
スマイリーは以前「どちらの体制であれ大した価値はないと認める潮時だろ?」とカーラを説得しようとした人間なので、サーカスを裏切る事に声を荒げる人間ではない。
あくまでこの映画は愛の物語なのだ。
それも淫靡な愛の物語なのだ。
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