こたつむり

オックスフォード連続殺人のこたつむりのレビュー・感想・評価

オックスフォード連続殺人(2008年製作の映画)
3.8
♪ 張り裂けそう 孤独の中
  あてもなく星を数え 
  満たされない 想いの中
  作りかけのパズルを抱いて

とても知的なミステリでした。
殺人予告に遺された謎の記号。
警察を嘲笑うかのように起きる殺人。
鉛色の空が落ちてきそうなほどに陰鬱。

しかも、主人公を含めて誰もが疑わしいのです。嗚呼、なんて素敵な筆致なのでしょうか。灰色の脳細胞(なんて立派なものではありませんが)フル回転間違いなしの仕上がりでした。

そして、本作の重要なポイントは“数学”。
…と見せかけておいて、根底に流れているのは哲学。世の中で最も精緻で論理的な“数学”の本質に迫るように、迂遠で胡乱な推論。いやぁ。知的好奇心がブリバリと刺激されて変な声が出そうですよ。うけけけけけ。

確かに考えてみれば。
“数学”が純粋だとしても、それは自然界に存在したものではなく、人間が作り出したルールに拠りますからね。1、2、4…その次にくる数字を決めるのは“我々”なのです。当然の話ですね。

だから、本作は論理的でありながら感情的であり、機械的でありながら情緒的な二律背反の面を持っているのでしょう。そう。矛盾こそが、この世で最も確実な“真理”と言いたいわけですな。いやぁ。面白い。

それにしても、相変わらず、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督は見事ですね。本作の場合、監督さんの本領である“変態性”は抑え気味ですが“独特”で“刺激的”なのです(但し、一部で爆発していますけどね…スパゲティを食べる場面とか、裸エプロンとか)。

まあ、そんなわけで。
何が伏線なのか伏線でないのか。
考えれば考えるほど思考の迷路にハマり、単純明快な答えに気付かない…そんなミステリの王道を往く作品。頭の中で色々と“捏ね繰り回す”ことが好きな人にはオススメです。
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