真世紀

エレクション 死の報復の真世紀のレビュー・感想・評価

エレクション 死の報復(2006年製作の映画)
4.8
前作より二年後の和連勝会会長選挙、さらに陰惨の度合いを深め、ジョニー・トー史上、最陰湿な闘争劇。

前作で会長就任のサイモン・ヤム、それに助力し、彼を「契父」と呼び、従った男達が今度は次期会長の座に蠢く。慣例を破り、再選を狙うサイモン。最有力候補は中国本土へ実業家として手を広げるも、ビジネスのために会長の肩書きを必要とするルイス・クー。

「仁義なき戦い」の山守親分のように他の候補者を煽り、ルイス・クー潰しをはかるサイモン。前作はレオン・カーファイが抗争を辞さずと叫んでの組織分裂の危機、今作は水面下でより広がる暴力。

これまでのジョニー・トーノワールとの顕著な違いはロマンあふれる男達の友情の不在。前作でまだ感じられた友情の萌芽や堅い絆をうたう儀式も全て野心の前に虚しかったと判明。東映的にいえば任侠的要素がすっぽり抜け、実録路線。

そして本土の影響。黒社会側から富を求めて手をのばしたはずの本土、そこは汚職、癒着と公権力にも、香港以上の闇が広がる。富むための新天地が伝統的な組織の在り方すら歪ませかねない。

前作と状況が反復し、同じ人物がまるで違う行動を取ったり。また前作の猿に対し、本作では犬が登場し、畜生道と修羅道が隣り合わせ。

前作を下地にさらに濃厚、何ともコクとえぐみの有り過ぎる一作。原題は「黒社會2以和為貴」。和を以て貴しと為す…。
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