喜連川風連

座頭市あばれ火祭りの喜連川風連のレビュー・感想・評価

座頭市あばれ火祭り(1970年製作の映画)
4.5
新文芸坐でチョイスされる映画はどれも面白い。35mmフィルム上映にて鑑賞。撮影はあの宮川一夫。ピン送りのタイミングやフレームインのタイミングがどれも完璧で、職人の一品を堪能。

座頭市というヒーローに宿る、虚無性(ニヒリズム)が安保闘争に敗れた1970年代という時代を感じさせる。

最強の剣士、座頭市に迫る数々の危機。風呂場で斬りかかられたと思えば、桶を使って応戦。刺客の頭に桶を投げつけ、桶ごとかち割る。そのシュールさに笑った。血まみれの湯を上がり一言「いいお湯でございやした」

自分から決して斬りかかることはなく、襲った敵をバタバタとなぎ倒す。まるで自衛隊の専守防衛精神を見ているようだ。

三隅研次作品はどれも暗闇の使い方が上手い。仲代達矢をはじめ、人物が闇に現れ、闇に消える。仲代達矢の堕ちた旗本剣士という役柄がカッコいい。妻の幻影を見るシーンでのサイケ編集が好き。

小道具の使い方もイカしてますね。最後の勝負をしようと用意した丁半のサイコロの出目は全て真っ白。勝負を覚悟する座頭市に火がかけられる。泳いで脱出した座頭市が暗闇からもう一度現れるシーンのカッコよさ。

途中で現れる茶屋の夫婦の狂言回し、吉本新喜劇漫才に爆笑。

喜怒哀楽全てを混ぜ込んだ名作映画。プログラムピクチャーがこのクオリティで提供されていた時代が凄い。吉行和子さんの若い頃が美しい。
喜連川風連

喜連川風連