「影なき狙撃者」というタイトルの通りなかなか掴み所のない映画。
ちなみに原題は「満州からの立候補者」、リバイバル時の邦題は「失われた時を求めて」と、こちらもいまいちピンとこない。
なお、のちに「クライシス・オブ・アメリカ」としてリメイクされたそうだがそちらはまだ観ていない。
でもこれほど“洗脳”の恐怖を描いた作品はそうないと思う。あまりの救いのない展開に観たあとしばらくは呆然としてしまった。
ポリティカル・サスペンスってだいたい後味の悪い作品が多いがこの映画はその極地だと思う。
主演はローレンス・ハーヴェイ、フランク・シナトラ。そしてジャネット・リーやアンジェラ・ランスベリーが脇を支える。
朝鮮戦争で武勲を立てたショー軍曹(ハーヴェイ)は帰国後に英雄として称賛される。
しかし、ハーヴェイが所属していた小隊の隊長だったマーコ大尉(シナトラ)は何か釈然としないものがあった。
確かにあの時俺たちは敵軍に捕まった……、そしてショーのおかげで助かったはずなのに……でも何か、何か違うような気がする。
マーコをそんな感情に駆り立てるのは、毎晩悩まされる恐ろしい悪夢のせいだった。
椅子に座らされた小隊は、なぜか園芸クラブの会合に参加している。そこへ穏やかそうなご婦人がショーに語りかける。
殺せ……
彼女の言葉にやおら立ち上がったショーは目の前にいた戦友を眉ひとつ動かさずに殺害する。
そしてその凄惨な光景を見ているマーコたちもまた無表情のままだった。
しかし、これは夢ではなかった。東側の特殊部隊は捕まえた兵士の中からショーに対して洗脳を行い、彼は意のままに動く殺人マシンとなってしまったのである。
久々に使うフレーズだが、ほんとコワイコワイですねー。
マーコはひょっとしてあの悪夢は実際の出来事なのではと思い始めショーと接触するが、既にショーの前に彼を洗脳した東側の工作員が現れていた。
なるほど、この連中とシナトラがラストに対決とかするんだなと思いきや、本作は中盤から思いもよらない展開になる。
当時はあまりにも突飛すぎる展開で不評を買ったそうだけど、トランプのロシア疑惑のニュースとか考えると、あながちあり得ない話ではないように感じる。
フランケンハイマーのシャープな映像がいつまでも胸に突き刺さる。
■映画 DATA==========================
監督:ジョン・フランケンハイマー
脚本:ジョージ・アクセルロッド
製作:ジョージ・アクセルロッド/ジョン・フランケンハイマー
音楽:デヴィッド・アムラム
撮影:ライオネル・リンドン
公開:1962年10月24日(米)/1963年2月9日(日)