がんちゃん

不思議惑星キン・ザ・ザのがんちゃんのレビュー・感想・評価

不思議惑星キン・ザ・ザ(1986年製作の映画)
4.5
ハリウッドよ、
これがソ連製スター・ウォーズだ(笑)

頑張らない系脱力ヘンテコSFと思いきや、社会主義への密かな風刺が込められた本作。体制批判=収容所送りというリスクに負けず当局の検閲をかいくぐって上映された結果、ソ連では1570万人を動員するほどのカルト的人気を博した。その勇気はまるでデス・スターを奇襲した反乱軍のようである。今でもロシアに行けば挨拶は「クー!」で通用するとかしないとか。

横暴なエツィロップは「POLICE」を逆さまに綴ったもの。プリュク星ではカツェ(マッチ)が莫大な価値を持つという設定はインフレで物の価値がおかしくなった状態を表している。社会主義は富が平等に分配される制度かと思いきや、実際は真っ先に権力者によって搾取され、人民に配給されるのは絞りカス。働いたら負けなので生産性は落ち、金はあっても物資は手に入らない。宇宙船の部品を探して砂漠を彷徨う主人公の姿がそこに重なる。

そしてもう一つのテーマは人種差別。本作のロシア人主人公はグルジア人の青年と協力するだけでなく、現地の宇宙人も見捨てない優しさをみせる。この意図は監督自身がグルジア出身であることを鑑みれば明らかである。
しかし残念ながら、公開から20年が経っても民族紛争は続いている(映画『オーガストウォーズ』を参照)。もちろん差別はロシアに限ったことじゃない。

そんな深読みもできるし、ただただシュール世界観を楽しんでもOK。地球の皆さまは全員パッツ人ですので、万がいちクロス番号215の惑星プリュクに転送されてしまった場合はツァークの装着をお忘れなく。黄ステテコ様には2回クー。

ちな、DVDのホーム画面を放置しておくとスクリーンセーバーが発動して謎のエンドレスクー状態になるので必見(笑)
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