和桜

オペラハットの和桜のレビュー・感想・評価

オペラハット(1936年製作の映画)
3.8
田舎の若者が大富豪の遺産を相続することに。マスコミや大衆はどんな人物がやってくるのかと騒ぎ立てるが、彼は遺産に興味無し。群がる人間や噂に嫌気がさす中、一人の女性と出会い恋に落ちる。

自身のアカデミー賞受賞作『或る夜の出来事』で見せたラブロマンスを軸に、後半からはこの後撮られる『スミス都へ行く』や『群衆』の原型とも思える社会派ドラマへ突入。先の二作を見ていると、ラストの大立ち回りは物足りない感もあるんだけど、キャプラ的ヒューマニズムは健在で安心して楽しめる。
悪人と善人だけでなく、悪人や善人になりきれない人間が物語を動かしている彼の映画は、単純な勧善懲悪とも言い切れない面白さがある。

遺産を失業者のための政策に使うなんて精神的な疾患があると裁判にかけられる中、「必要な人のためにお金を使うのは異常か?」「坂を登ったものはまだのものを助けるべきだ」と問いかける。
これは深刻化する経済不況や社会不安も政府の政策で何とかしてくれる、余計な事はするな!という側への反論でもあって、当時の大衆が抱いていた不満を代弁するもの。
批評家に酷評されながらも大衆の支持で映画館を賑わせたキャプラの映画は、常に大衆の側に立っていた事が良くわかる。
和桜

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