ほーりー

少佐と少女のほーりーのレビュー・感想・評価

少佐と少女(1942年製作の映画)
4.3
徐々にではありますが家のことも落ち着いてきたので、映画レビュー再開します!

復帰第一本目は、自分がいちばん好きな映画監督のデビュー作をチョイス。

ビリー・ワイルダーの「少佐と少女」は正確に言うとハリウッドにおける監督処女作。本当のデビューはパリ亡命時代に作った「悪い種子」(DVDだと「ろくでなし」のタイトル)になる。

ただ本作、それまで助監督経験をしたことがない脚本家が撮ったとは思えないほどクオリティーが高い。

都の夢破れて故郷へ帰ろうとする女性(ジンジャー・ロジャース)。ところが帰りの汽車賃が足らずに困った彼女は11才の女の子に変装し子供料金で帰ろうとするというストーリー。

まず、当時31才のジンジャー(あ、今の俺と同い年や)が子供に変装するというシチュエーションの物凄さ。

「お熱いのがお好き」のカーティス&レモンの女装並みに絶対すぐにバレるがなというレベルです。

とは言うものの、今回久しぶりに観て「ジンジャー・ロジャースってこんなに巧い役者だったんだ!」と思った。それぐらい本作のジンジャーの少女演技は素晴らしい。

特に声色の変え方が巧く、少女の声、高飛車な女性の声、中年女性の声とその変幻自在ぶりに驚いた。

さて映画本編ですが、これが初っぱなから可笑しい。

本筋とは全く関係ないオランダ人と先住民とのくだりや、ロバート・ベンチュリーとジンジャーの頭皮マッサージの攻防戦など、何度も言うけどこれが実質監督デビューの人の作品とは思えない。

物語はやがて陸軍幼年学校の教官である少佐(レイ・ミランド)と出会い、とある事情で彼が働く幼年学校へ一緒に行くことに。

この少佐がいい人過ぎて、ジンジャーのことを最後まで変装だと気付かないのが可笑しい。

だけど少佐も、相手は少女なのに何でこんなに僕はドキドキするんだろう? 僕はどうかなってしまったのでは?と次第に悶々としだす。

これをですね、こういう際どいネタを1942年に作ったというのが凄いわけです、ワイルダー。

ちなみに、ラストに登場するジンジャーのお母さん役の女性は実際にジンジャーの母親であるレラ・ロジャースが扮している。

もうこの時からワイルダー先生はメタなネタをやっていたんだなぁ。

■映画 DATA==========================
監督:ビリー・ワイルダー
脚本:チャールズ・ブラケット/ビリー・ワイルダー
製作:アーサー・ホーンブロウ・Jr
音楽:ロバート・エメット・ドーラン
撮影:レオ・トーヴァー
公開:1942年9月16日(米)/未公開(日)
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