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ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生のYAEPINのレビュー・感想・評価

4.4
本作には、ゾンビ映画の元祖というイメージしか持ってらず、まさかこんなにも痛烈な社会批判と胸糞展開が用意されているとは思わなかった。
見た目のショッキングさだけでなく、ロジカルで鋭い視点を持って作られた、現代から見ても稀有な作品だと思う。

ある兄妹が墓参りに行ったところ、ゾンビが発生し、妹のバーバラは命からがら小屋に逃げ込む。
そこで複数の男女と立てこもるが、その集団の中で1番冷静で、行動力があるヒーロー的存在が黒人男性という設定なのに驚いた。1960年代の映画では通常考えられないことだろう。
そもそも、ゾンビ映画でこんなに素早く的確な行動をする登場人物は、久々に見たかもしれない。

一方のバーバラは何かとすぐ失神するし、常軌を逸して外に出ようとするし、あまりに迷惑な存在だ。
他の白人キャラクターも自己保身しか考えず、団結するのにかなりの時間がかかる。

それでも最終的には人種や立場を超えた協力関係を結び、危機に対して待っているだけではダメだ、行動するべきだ、という前向きなメッセージを感じた。

元祖ロメロゾンビは、動きがゆっくりで力も強くないので、少しだけなら外に出て立ち向かうことも出来る。
初めは結構余裕では?と思っていたが、なまじ外に出る隙があるからこそ危険もあり、ゾンビは走らないからといって舐めてはいけないと思い知った。
とはいえ、ゾンビが道具を使えちゃうのはずるい気がする。

また劇中で、ゾンビの発生に宇宙の影響が囁かれているのにも驚いた。
時代は月面着陸の前夜、アメリカとロシアの激しい宇宙進出競走を皮肉っているのかもしれない。

当時は損壊された死体の美術が難しかったのか、それを隠すために時々カットの切り替えが不自然で笑ってしまった。
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