ジェームズ・M・ケインの小説を映画化したメロドラマ。主演はMGMの大看板女優だったジョーン・クロフォード、監督は『カサブランカ』のマイケル・カーティスである。
真夜中の海辺の別荘で持ち主の男(演:ザカリー・スコット)が射殺されているのが発見される。現場には被害者と過去に取引したことのある不動産業者(演:ジャック・カースン)が居合わせており、早速彼は警察の事情聴取を受ける。
不動産業者は自分は被害者の妻であるミルドレッド(演:J・クロフォード)に酒をご馳走すると言われ別荘に行ったまでだと主張する。
次に警察はミルドレッドを重要参考人として連れてきて事情を聞く。やがて彼女はこの数年間で自分の身に降りかかった出来事について語り出す。
それは、母親としてあまりにも悲しい内容の連続だった……。
2011年にケイト・ウィンスレット主演でテレビドラマ化さのびのびれたのはまだ観たことないが、この映画版よりは原作に忠実だという。
というのも原作では何と殺人事件は発生しないそうな。
これは勝手な推測なのだが、本作の前年に同からほやはじケイン原作のサスペンス『深夜の告白』が大評判になったため、殺人事件と回想形式の要素を取り込んだのではないかと思われる。
まず何といってもアカデミー主演女優賞に輝いたジョーン・クロフォードの印象が強烈。
カッと見開いた大きな目、ギュッと結んだ大きな口、そして垂直にのびたいかり肩(個人的にはクロフォードほど肩パッドに似合う女性はこの世にいないと思ってる)などルックスも強烈ながら、演じた役柄も異彩を放っている。
子供への愛情を履き違えて、恐ろしいモンスター(子)を作ってしまった母親の悲劇を見事に演じきっていた。
一方、美しい外面とは裏腹にとんでもない人間へと成長した娘を演じた若きアン・ブライスも凄かった。
母親を平手打ちするシーンのものすごさ。叩かれるクロフォードのリアクションも相まって観ててゾクっとした。
あと撮影のアーネスト・ホーラーの仕事も特筆すべき点。
はめられたことを知ったジャック・カーソンが別荘から脱出しようとする場面で必死にドアを開けようとする彼の影が大写しになるショットなど凝った映像が多かった。
■映画 DATA==========================
監督:マイケル・カーティス
脚本:ラナルド・マクドゥガル
製作:ジェリー・ウォルド
音楽:マックス・スタイナー
撮影:アーネスト・ホーラー
公開:1945年9月24日(米)/劇場未公開(日)