聖性があるばかりに、へたに悪意がなく誰とでも寝てしまうことで、迷惑をかけてしまう。
家族が翻弄されていく物語は、パオロ=パゾリーニ監督の『テオレマ』を想起させる。あっちは、美青年が母とも娘とも、父とも関係を持ち、家族が崩壊するさまを描いていた。
キム=ギドク監督も、いつものようにエグいラストを用意するかと予想したが、違っていた。
売春宿などを、シビアかつストレートに描くところは『悪い男』と同じようだが、今回はユーモアも暖かみもあった。
しかし、ラストまで目を離せなくなるところは、さすがだ。
無理にエグさを前面に出そうとするのではない、描きたいからそうする、そういう姿勢が潔い。