るる

クラウド アトラスのるるのネタバレレビュー・内容・結末

クラウド アトラス(2012年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

古典的なジャンルが混じり合って構成された、壮大な物語を、見事に一本の映画として仕上げて見せた、脚本と編集の妙を堪能できる作品。

設定には『火の鳥』と『ジョジョ』を連想した。というか、『火の鳥』がどんなに凄い漫画かということを再確認した。
一人の俳優が何役も演じてみせるのは演劇的で、まさにスターシステムというべきで、ナイス・アイディア。
輪廻転生の概念が馴染み深い日本でこそ、もっと知られてもいいと思う
ただ、巡る人生の中での奇跡を示唆しているけれど、『火の鳥』の中で無常観とともに語られる人間讃歌のような、一本貫くような骨太な芯がないんだよな。
それでも、すごい映画なのは間違いない。

時代を超えて語られるセリフが重なり合うさまが、まさに六重奏。ただ、肝心の楽曲のインパクトが弱いのが本当に惜しい。
しかし、ゲイの二人の空想の中での再会には目頭が熱くなったし、ペ・ドゥナのベッドシーンは美しかった。
決死の航海の末にジム・スタージェスが再会を果たした相手には息を飲み、涙が出た。
三時間の終盤にきっちりカタルシスが用意されていて、しっかり満足。

原作は小説ということで、読んでみたいと思った。ひょっとして各章、各ジャンルに合わせて、文体も変えているのだろうか? それなら尚更、小説ならではの表現を映画的表現のもと実写化したという意味で、凄い。

各時代の物語は、あえてベタに作られているのだが、ネオ・ソウルの世界観は見応えがあるし、介護施設からの脱出というドタバタ展開も今日的だ。
ゲイのふたりが未来でも結ばれないあたり、ウォシャウスキー監督姉弟の葛藤が垣間見えるようでちょっぴり切ないが。
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