岡田拓朗

舟を編むの岡田拓朗のレビュー・感想・評価

舟を編む(2013年製作の映画)
3.9
これは日本にしか作れない作品だと思った。

言葉は自分が思っていることを伝えるための手段である。
その前提を持ちながら、時代が変わることで、言葉の持つ意味が人知れず変わっていたり、新しい言葉が生まれたりするのを受け入れようとする姿勢そのものにまずは感服。

流行言葉や若者言葉に対して、否定的な人も多い中、今作は言葉の持つ本来の目的や意味を、「大渡海」という「今を生きる」辞書を作ることを軸に、しっかりと描写しているのが素晴らしかった。

また、仕事においては特に、適材適所が大切であり、いわゆる天職に就けることがどれだけ幸せなことか、素晴らしいことかがわかる。
それは見ず知らずの人から与えられることもあるので、与えられた機会にはひとまず飛び込んでみることって大切やと思う。

タイプの全く違う馬締(松田龍平)と西岡(オダギリジョー)が、それぞれの強みを活かして「辞書作り→広報、宣伝」までを、一貫して行い、相乗効果を生んでいく展開もよくて、これこそが適材適所。

自分たちが作るものに対しての情熱やそれぞれに対しての尊敬を持ちながら、よいところを認め合いながら仕事をしていける環境はとてもよいなと思ったし、それがこのような素晴らしい作品を完成させることに繋がるんだなと。

人に自分の言葉で伝えることが苦手だった馬締が、仕事を通して様々な人と触れることにより、自分の言葉で伝えることだけでなく、人と関わることができ、人の心を動かしていくようになる。
馬締は色んな人に変わっている、おもしろいなどと言われていたが、そういう部分を愛おしく色んな人に受け入れられているように描いているのは嫌味がなくてよい。
変わっていることを個性として捉え、それが人に受け入れられている姿に、個性を大事にしていくことへの肯定があったように思えた。

さらに、馬締の相手に香具矢(宮崎あおい)と西岡の相手に三好麗美(池脇千鶴)。
それぞれがそれぞれでよいところがあり、さらにそれが合っている。
今作でも宮崎あおいが理想的な女性像すぎて好感度はもう上がっていくばかり。笑(ご結婚おめでとうございます)

「舟を編む」というタイトルは、舟を編むことが、コツコツと地道に時間をかけて積み上げないといけないことと適材適所で協力しながら作り上げないといけないこと(この映画そのもの)を表現しているようなタイトルである気がした。

心温まる良作でした。
そして、言葉選びには気をつけないといけないなと思わざるを得ない。
岡田拓朗

岡田拓朗