めしいらず

君と歩く世界のめしいらずのレビュー・感想・評価

君と歩く世界(2012年製作の映画)
3.1
シングルファーザーとなった男と不慮の事故で両脚を失った女の物語。女は美貌への自負をもぎ取られ引きこもる。彼女の目を男は外へ向けてやろうと海へ連れ出す。それなのに彼女をほったらかして彼は自由に海を泳ぎ回るばかり。女の中に芽生える不思議な感情。それは男の視線をほしいままにしてきたそれまでには感じたことがなかったもの。子供のように今やりたいことに熱中してしまう猪突猛進。単純で単刀直入な生き方が可笑しくも魅力的に映る。男の肉体に漲り躍動する生に当てられたように彼女は生きる力を取り戻し始める。働きながら週末のストリートファイトに熱中する彼を止めるどころか感化され彼女もまた逞しさを見せ始める。荒くれ者同士のお似合いのカップル。しかし男はやはり決定的に思慮が足りない。社会人としても、父親としても、愛したい相手としても。皆から距離を置いてようやっと理解される大事な人、大切なこと。彼は皆の元へ戻る。
シャチの調教師だった女が、再びシャチと意思を通わせ事故のトラウマを乗り越える場面の心揺さぶられる美しさ。音声を省いた時間を積極的に用いた静かな語り口がいい。本作のコティヤールは本当に綺麗。
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