セルジュ・ゲンスブールも、先ごろ亡くなられたジェーン・バーキンのことも、恥ずかしながら浅学寡聞にして知らず、紫のみなとさんのレビューで当作を知り鑑賞。バーキンはミケランジェロ・アントニオーニの「欲望」で観たくらいしか記憶がなかった。
場末のダイナーでウェイテレスを務める中性的な面持ちのジョニー(ジェーン・バーキン)に、ゴミ投棄のトラック運転手、クラスキーが恋をする。だがクラスキーは、男性が相手でないと性的機能が働かないゲイであった。クラスキーを受け入れるため、ジョニーはクラスキーと鶏姦をするが、苦痛のあまり叫びをあげる。
眉を顰めかねないシーンも多く、野卑にして猥雑、剥き出しの生をこれでもかと叩きつけてくるが、ここに描かれているのは、性別を超えた普遍的な愛。今でこそ、クイアムービーとして認知されているが、およそ50年前の欧州では、同性愛は犯罪や変態と見做されていた中で、非常に革新的。
描き方はかなり先鋭ではあるが、ゲイをモチーフの一部としながらも普遍的な愛を扱ってる点では、最近の名画、「青いカフタンの仕立て屋」や「大いなる自由」と構造的には同じ。半世紀も前にこんな先駆的作品があったとは知らず、驚きかつ愉しめた。
過激な性描写には拒絶反応を起こす方もいらっしゃることであろう。それを超えて、はたまた時代も超越して訴えてかけてくる何かを持った作品だという印象をもった。Amazon Primeで視聴可能。
改めて本作を観るきっかけとなった、紫のみなとさんに感謝いたします。