岡田拓朗

地獄でなぜ悪いの岡田拓朗のレビュー・感想・評価

地獄でなぜ悪い(2013年製作の映画)
3.7
地獄でなぜ悪い

この映画をどう捉えたらよいのか、正直わからなかったけど、一言で表現するのであれば、「起きたらめっちゃホッとする類の夢に出てきそうな映画」でした。
よく夢に強烈な出来事が出て来て、これ夢であってくれて起きたらホッとするやつ、そんなハラハラする夢みたいな映画。

愛のむきだしによって、園子温監督のその独特な世界観に魅了されたわけですが、今作は奇想天外でストーリーもめちゃくちゃ過ぎてよくわからなかったというのが正直なところ。笑

愛のむきだしはそれこそややリアルを追求してる感あったけど、今作はマイノリティーをファンタジックにコミカルに寄せて描かれ過ぎてて、監督がやりたいようにやり切った感じで、監督もキャストも撮ってるとき絶対楽しんでただろうなーというのがわかる。
それくらい振り切ってる。

まあそんなめちゃくちゃという前提が、園子温監督らしさでもあるのかなと思いつつ、これが映画として成り立ってしまう凄さと意外と伏線がちゃんと回収されてなかなかおもしろいと感じさせられるのに恐れ入った感じ。

大体この類の映画は、意味わからんの一刀両断で評価が自分の中ではだだ下がらざるを得なくなるけど、そうならないのはやっぱり園子温監督の手腕とキャストの名演に因るものであると感じさせられる。

今作は観ていくと、まさにタイトルの「地獄でなぜ悪い」に行き着く。
愛とか優しさとかやや描かれてるけど、それはいかにもチープすぎる描かれ方で、圧倒的にマイノリティの普通の生活から外れまくってる人たちの世界を地獄と捉えて、そんな生き方や世界の何が悪いんだということを、あらゆる場面からどんどん迫ってくる。

そしてそれぞれのモノコトに対しての尋常じゃない執着心から来る超絶怒濤の思考、行動と圧倒的なイカレ具合がストーリーを追うごとに、一気に押し寄せて来て、最後の映画撮影で爆発する。

何やこれと思いながら鑑賞していたのがいつのまにかのめり込まざるを得なくなるというか、なぜか見入ってしまっていて、こんな地獄も悪くないんじゃないか、と思わされそうになって、映画が終わってやっと一息ついたときに我に帰り、いやいや違うだろ笑とハッとさせられる。

長谷川博己が最後に空想するシーンなんかは本当は感動なんてするものでないであろうに、ちょっと感動してしまった辺りが負けた感。

ただし今作はこの世界を前向きに受け入れようとする人じゃないと置いてけぼりくらって全然楽しめない予感もするのと、わりとグロテスクなシーンが多くて、コメディやから重すぎないとは言いつつも、そういうの苦手な人はあまり鑑賞することをおすすめしません!笑

あと地味にキャストがめっちゃよくて、特に長谷川博己、二階堂ふみ、星野源がしっかりイカレててかなりいいです。
國村隼と堤真一を食ってかかるような勢いがある。
特に、二階堂ふみファンにとってはたまらない作品。

そして、園子温監督作品とゆらゆら帝国の奇妙な親和性。
映画界と音楽界の似た者同士が組むとやはりハマるし、ハマり方が物凄く独特。

愛のむきだしでも挿入歌として流れてたけど、園子温監督はゆらゆら帝国好きなんかなー。
美しい。
岡田拓朗

岡田拓朗