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桃太郎 海の神兵のzhenli13のレビュー・感想・評価

桃太郎 海の神兵(1945年製作の映画)
4.2
2015.12.16
フルアニメーションの繊細で滑らかな動き、細部まで行き届いた丁寧な描写、真摯なキャラクター造形…擬人化された動物たちの溌剌として凛々しい表情、可愛らしさに衝撃を受け、これが太平洋戦争末期のプロパガンダであるという事実に70分間滂沱の涙。

擬人化動物の子どもたちのガヤは本当に子どもの声を使っているようで、そのいきいきとしたガヤもまた心を打って涙が出る。
「アイウエオの唄」は一度聴いただけで頭から離れず、思い出すだけで切なくなる。この唄が登場する日本語教育のシーンでは、ただ教わるだけでは全くやる気の出ない南方の動物たちが「アイウエオの唄」を知ることで楽しく日本語を覚えていく。
明らかに「教化」のプロパガンダである。
しかしそれは一方で、人の心を動かすのは権力による支配ではなく音楽(芸術)であるという、表現者たちが潜ませてる普遍のメッセージであるのではと、私は思っている。

※本作を観た高校生に、実際の日本軍がこの頃南方でボロボロになっていたことを知らない子、プロパガンダとしてのメタ的な視点を持てない子がいたことは結構衝撃だった。

2018.7.11
子ども(の動物)が声優でなく本物の子どもの声で、ヌルヌルのフルアニメーションで「わ〜〜」みたいな歓声上げられるともう胸が締めつけられて号泣。

『桃太郎 海の神兵』には国策を超えた意地が詰まってる。瀬尾光男、政岡憲三をはじめとしたアニメーターたちの。
物資不足により使い古しのフィルムを洗って再利用したという。
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