藻類デスモデスムス属

サイの季節の藻類デスモデスムス属のレビュー・感想・評価

サイの季節(2012年製作の映画)
3.0
犀はどうも異質ですね。
種としては近縁でも、自然と調和する牛とはやはり違う。
塩の塊である大地を生きている。
まるで彩度を抑えられた映像のなかに住んでいるかのよう。
のろのろと歩く牛に対して、じっと停止していることが多い。
にも関わらず絵画的じゃない。
気がつくと突進している。
また気がつくと停止している。
時間の解釈が根本から異なっているみたい。
乾燥した硬質な灰色の皮膚は、峻厳に犀を画している。
その牢屋の中は水脈かしら。
隠し通したまま死んでいくから、想像するしかない。
なかなかそのように貫徹できるものじゃない。
つまり大変な頑固だけれども、その頑固を振りかざしたりしない。
ただ頑なに死んでいく。
といっても、石のように固まって静止して死ぬわけじゃない。
これがなかなかの大往生で、横に倒れ、ドシンと地面に体を打ちつける。
すぐには息絶えないから、いよいよおもしろい。
空っぽの口を動かし噛む。さらに噛む。
やがて季節の残り滓を吐き出す。
なるほど死に様を探していたのでしょうか。
異なる世界に属しながら、この世界には必要不可欠な存在。
人間の対極にあって、地球上では最も宙に近い生命。
犀の角からはライナシウム(Rhinosium)という元素がとれて、曇り空の星のように鈍い光沢を放つ。
ライナシウムを糸状にしたものは、犀糸と呼ばれている。
それは切れることのない、管。

*「サイの最後の詩」からの引用部分。「大地は硬い塩の塊 サイは頭を垂れて大地を舐め」「空っぽの口を動かし噛む さらに噛む やがて季節の残り滓を吐き出す」