こたつむり

まぼろしの市街戦のこたつむりのレビュー・感想・評価

まぼろしの市街戦(1967年製作の映画)
4.2
♪ さあさあ 寄っておいで 覗いてみな
  今宵皆様にお贈りするは
  ありとあらゆる愛ヌラリ お楽しみあれ

唯一無二の反戦映画。
…として巷で評判のカルト映画。
念願のレンタル開始!ということで、ようやく鑑賞することが出来ました。

ジャンルで区分するならばコメディ。
…なのですが、根底に流れるのは哀しみ。
何も考えずに嗤うような物語ではありませんでした(誤解が誤解を招く展開は面白いですけどね)。

何しろ、物語の主役は狂人たち。
…というか、これって言葉の選択として適切ではないかもしれません。何が正常なのか、何が狂気なのか。そんなことは誰にも決められませんからね(少なくとも僕は正常じゃないと思っています)。

どちらにしろ、隔離された人たちの物語。
…というか、これも適切ではない言葉ですね。
正常(だと思っている人たち)は、彼らを守るつもりで幽閉しているのでしょうから(幽閉ではなく保護だと言うのかもしれません)。

ただ、人類において最も重要なのは“自由”。
…それは歴史が証明しているわけで。
檻の中に閉じ込められていても、精神は青空の下を飛ぶかの如く。そんな彼らは光り輝いていました(檻の中を選ぶライオンが皮肉的です)。

そして、それを具現化したのが《コクリコ》。
…バレエのチュチュこそが正装と言い、純真な眼差しで主人公を見つめる美しさは素晴らしく。たとえ物語に振り落とされたとしても、彼女を観るだけで眼福なのです(卑猥な思いは抱いていませんよ)。

まあ、そんなわけで。
第一次世界大戦を舞台にした反戦コメディ。
「感受性が豊かな年頃に鑑賞していたら価値観が変わった」と思うほどに豊饒な物語でした。たぶん、今の日本では規制の声に囲まれて、作ることが出来ない系統ですね。そう考えると、本作を笑い飛ばす剛毅さはフランスの強みですな。懐が大きい。
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