むっしゅたいやき

エロイカのむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

エロイカ(1957年製作の映画)
3.8
ポーランド派の名匠、アンジェイ・ムンク監督作品。
同国のヴァイダに由る『地下水道』と同じくワルシャワ蜂起を取り上げ、その前後のレジスタンスの人々をシニカルに描いた作品である。
元来ベートーベンの交響曲に倣って三部構成で制作されたが、完成した第一部にムンク自身が納得出来ず削除、二部構成として公開されている。

・第一部 ポーランド風スケルツォ
ワルシャワ蜂起直前、レジスタンスから逃亡した卑怯な男が"英雄視"されるまでをコミカルに描く。

・第二部
蜂起直後の将校収容所を舞台とし、戦前から戦中へ至る古参将校達の硬直化した価値観、階級意識を冷やかに描く。

ムンクの他作のレビューでも述べたが、ポーランド派の監督達は大戦開始の直前直後に生まれ、戦後混乱期に青春時代を送った世代である。
この為、大戦を総括する作品を描く事が特徴となる。
ムンクの本作に於けるスタンスは正に其れであり、ソ連軍との連絡不足から多数の死者を出した当時のレジスタンス首脳部を厳しく皮肉り、糾弾するものである。

本作は上述した通り制作背景も非常にポリティカルな作品である為、観て楽しいものでは無い。
しかし夭折したムンクのディスコグラフィの中でも、"戦争とその世代への総括の集大成"として、特別な位置に在る作品である。
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