こたつむり

セデック・バレ 第一部 太陽旗のこたつむりのレビュー・感想・評価

4.1
♪ 閉ざされた本能の扉開く そのために
  SILENT SOLDIERS 目覚めよ

霧社事件。
それは、昭和5年に台湾で起きた大量虐殺、そして抗日蜂起。大日本帝国を語る上で重要な“ピース”だと思うのですが、いまいちマイナーなのは“相手”が語らないから…でしょうか。

でも、それは日本人の甘え。
この事件は真珠湾攻撃や南京大虐殺などよりも根深い問題。何しろ“禍根の原因”が無くなったとは思えませんからね。

確かに、現地の人たちを下に見て“差別的な言動”をすることは減りました。しかし、それは表層の話。日本人同士でも高圧的な態度で“差別”する人はいるわけで。外部に向けて「絶対にない」なんて言えません。

特に本作の中で。
木村祐一さん演じる警察官と同じ言動をする人は、今でもいると思います。上司や顧客に媚び諂い、部下や下請を“物”として扱う。ね。日常茶飯事でしょ。

だけど、本作が素晴らしいのは、そんな腹立たしい日本人と同じように“敬意を払うべき日本人”も描いたこと。出来る限り、中立的な視点を保とうとしているのです。

それは日本人俳優の起用に顕著でした。
これがハリウッドの作品だとしたら、重要な役柄は日本人が演じても、端役はアジア系のアメリカ人に任せていたことでしょう。でも、それだと意味がありません。

また、中立的な意識は冒頭から表れていました。「これは事実に基づく物語」ではなく「史実を基にしているが創作も含む」と明記していますからね。映画として正しいスタンスだと思います。

それに山奥で当時の状況を再現するスケール。
いやぁ。気合が違います。予算をしっかりとかけて、細かいところまで検証しているから(家の中の薄暗さがリアル…って、今どきの人には分からない感覚ですかね)迫力が違うのです。

まあ、そんなわけで。
日本人ならば鑑賞しておくべき作品。
少なくとも、霧社事件を知らずに「台湾って親日国」と言うのは違うと思いました。
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