茶一郎

スノータウンの茶一郎のレビュー・感想・評価

スノータウン(2011年製作の映画)
3.7
『 最近、母親にできた彼氏の様子がちょっとおかしいんだが。 』

 走る車、その窓ガラス越しの曇り空をカメラが捉える。何か嫌な予感がするなぁと思うと、予感は的中。そして、劇中、この曇り空が晴れることはなかった。

 普通の人が狂気、犯罪に巻き込まれてしまうとすれば、今作はオーストラリア版「冷たい熱帯魚」ただ、登場するのは、熱帯魚でも愛犬家でもなく、切り刻まれたカンガルーの死体。(この辺りは、オーストラリアらしさ全開)

 主人公とその兄弟がお隣さんの性的いたずらを受けたことから始まり、この町の住人、そこから突出した母親のカレがその変態野郎をぶっ潰すために立ち上がる。
最初はほんの些細ないたずら、アイスクリームで変態お隣さんの家に落書きから、思わず
『ちょ、ちょっと待ってください』
と言いたくなるほどエスカレートしていく。主人公は、この初めて自分に『正しくなさ』を教えてくれる彼氏に惹かれ、また、この町の人に認められる若さ故の承認欲求を刺激され、狂気に巻き込まれていくように見えた。
----------------------------

 冷たい映像美と画面構成、説明や心理描写が最小限に削ぎ落とされているため、主人公と同様な観客の巻き込まれていく感覚がより強くなる。気付くと、『変態野郎を殺せ』という自警、ビジランティズムはトンデモない暴走をしていった。

この町(おそらくココが、スノータウン)は一体、何なのか?町の会に必ず出席しているゲイのおじいちゃんは何なのか?
カンガルー怖。

僕自身、頭に『?』が浮かんだまま、結果的にこの作品に巻き込まれてしまった。
茶一郎

茶一郎