Oto

きっと、うまくいくのOtoのレビュー・感想・評価

きっと、うまくいく(2009年製作の映画)
4.0
5年くらい前、当時ほぼ映画を知らない時期に観てすごく感銘を受けて、自分の学業に対する姿勢も強く影響された映画。
今みてもやはり観客の人生への影響力が大きい映画だなぁと思った一方で、かなり印象が変わったので観直して良かった。

製作者なりのクリエイティビティをランチョーの存在で定義をしてるのだと思って、それは「成功や名誉がなくても没頭できる好きな仕事をすること」と、「他人の幸せのためなら掟を破ること」なのだろう。その猪突猛進具合に元気をもらえるのだけど、破綻も感じた。

ギャグはお約束というか新喜劇を見ているような感覚で、おじいちゃんを乗せてバイクとか、サイレンサーを監禁して運転とかまぁ笑えるんだけど、さすがに限度超えてるでしょってものが多い。
学年2位のやつがあの原稿読んで気づかないってどういうことなのとか、カンニングとかゴーカンとか放尿とかもはや正義ではないよとか、あのタイミングでちょうどよく結婚式やりますかのか、ランチョー以外の2人は特に努力もしてないしだんだん応援しづらくなっていく。

動物写真なんてしばらく忘れてたのに手紙出すだけでok来るんだとか、あんな面接で通るのどんな仕事だよとか。特に引っかかるのは「工学部出て金の亡者(銀行員)になるなんて…」みたいなセリフだけど、学んだこととやりたいことが違ってもええやん!って思うし、そりゃお金が第一になったら悲しいけど、初めの印象だけで決めつける短絡的思考の危険さを感じた。
Pursue excellence, and success will follow.はよくわかるし、そうなりたいと思うけど純粋にexecellenceだけを求めて頑張れる天才はなかなかいないんじゃないかと最近思う。

でも逆に言えば映画ってなんでもありなんだなぁってのは結構救いで、考えすぎたり見られ方を気にしすぎて諦めてしまうのが一番悲しいと思うから、これでいいやくらいの感じでも完成させて磨いて続けられるといいな。


-----

(一度目:2016/5/4)
機械科の学生的にも考えさせられたし、ラストが超気持ちいい。
インドだからこそ作れた映画かもしれないと思った。インド行ってみたい。カレーあるし映画あるし、it系に進むならありかもと思ったり。 Intermission入るくらい長いし踊りすぎだけど密度は下がってないのがすごい。最高だった、インド映画ナメてたごめんなさい。All is well.
インド映画好きになったきっかけの映画だけど、ここまで脚本が丁寧に練られてる映画は後にも先にもないな〜アーミル作品はどれも圧倒的にレベルが高いけど。

(町山さんの解説を聞いて。)
原題『3 idiots』からはじめは『3バカに乾杯!』という邦題だったけど、工科大はエリート集団だし、イメージが伝わりづらいってことで、キーワードの『きっとうまくいく』に。くだらなさ、グレーな笑いのようなインド映画らしさはあるけど。
町山さん曰く、ランチョは顔がエミネム、中身は植木等。日本で植木等が流行ってたのも高度成長期(60年代)で、インドにはいまその勢いがある。(日本も成長期にはミュージカル映画が流行ったらしい。)苦学生ラージューはおそらくカースト最下層だが、インドでは教育制度が発達してて、勉強ができれば学校へ行けて、それがインドの発展の基盤。
10年間を隔てた2つの時代を描くことでインドの急激な発展を象徴する映画にした。(韓国で言うと『サニー』。)実際、2010年のGDPランキングは1位 アメリカ、2位 中国、3位 日本で、2050年のGDPランキング予想は1位 中国、2位 アメリカ、3位 インド(日本は8位)になってるらしい。
その発展段階においてどうしても、いい企業に行って金持ちになることが目標となりがちなんだけど、ランチョの存在によって本来は人を幸せにするのがテクノロジーの目的なんだと思い出させる。インド・中国・韓国では実際にプレッシャーによる優秀な学生の自殺が多くて問題になっている。
ヒロインの顔は大谷直子×アンジェラアキ、映画自体は『いまを生きる』+コメディ+踊り、だそうです。
伝えたい内容が同じなら、やっぱり楽しく笑い混じりで伝えてくれる方がいいよなと思った。
Oto

Oto