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キック・アス ジャスティス・フォーエバーのsamurai_kung_fuのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

本作での最も素晴らしいシーンはラスト、ヒットガールvsマザー・ロシアの戦いであることに異論は無いであろう。殺人術を身に付けているとはいえ、まだ15歳の少女であるヒットガールに対し、ロシアの刑務所で同房の受刑者を喰い殺して逃亡した元KGBのマザー・ロシア。
本作ではヒーローになるイニシエーション:通過儀礼がテーマの一つになっている。ジャスティス・フォーエバーのメンバーたちにはリーダーであるストライプス大佐の死。キックアス:デイブにとっては父親の死が、それぞれを成長させるきっかけになる。ヒットガールにとっては、同じ条件で戦いを挑んでくる同性の強大なヴィラン「マザー・ロシア」の存在がそれに当たる。
しかし、ヒットガールは元々「本物のスーパーヒーロー」だ。もう、それ以上のステップアップは無い。だが、それはあくまで「現実」での話だ。そもそも『キックアス』はコミック原作があり、その映画化ということで2重にフィクションである。フィクションの世界ならウソがあって当然。「本物のスーパーヒーロー」のヒットガールはバットマンやパニッシャー同様のクライム・ファイター・タイプで、空を飛べたりクモのように壁を這い上ることはできない。要は(訓練はしているけど)普通の人と同じ能力しかない。その彼女が「アドレナリン」注射により超能力タイプのスーパーヒーローへと進化するのだ。
注射器はグリーン・ランタンの指輪のように超能力を担保するアイテムだ。現実に「アドレナリン」を皮下注射した場合にどうなるのか知る由も無いが、「キックアス」世界における「アドレナリン」は感覚を研ぎ澄まし、痛みを無くし、筋力を増強し、音よりも早く動けるようになる「最後の手段」になる。
マザー・ロシアの熾烈を極める攻撃をニコニコしたまま受け、すさまじいスピードで動き、放り投げたガラスのかけらが地面に落ちる前に拾って突き刺していく。最後の最後で完璧な虚構性へ飛んで行く。その開放感に痺れるのだ。
ラスト、シックスパックの色男に育った弟子であるキックアス:デイブにキスをして去っていく姿はウェスタンの流浪のヒーローそのものだ。
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