Thorta

海がきこえるのThortaのレビュー・感想・評価

海がきこえる(1993年製作の映画)
3.9
 東京の大学に進学した杜崎拓は、吉祥寺駅の反対側ホームにある人影を見た。中央線下り列車に姿を消したその人影は確かに武藤里伽子に見えた…高知での高校時代、あの頃の記憶が蘇る。

 90年代のジブリはまさに現代サブカルの源流であり、その時代を象徴している作品が多い。中央線の吉祥寺駅、向かいのホームのあの娘。昨今のサブカル映画にあってもいい設定から物語は始まる。

 物語の主軸は高知での高校時代、杜崎と武藤、そして杜崎の親友であり武藤に恋する松野の三角関係が描かれる。決して良い思い出ではないが、その過去が徐々に救われていく過程とラストにかけての高揚感に劇場を出た気分は最高だった。

 ただ、この話は日向にいた人達の話なので日陰族の心に刺さるどころか傷つけてくる。やっぱりオタク出身の宮崎駿の『耳をすませば』の方が作品のトーンが心地よい。
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