モモモ

海がきこえるのモモモのレビュー・感想・評価

海がきこえる(1993年製作の映画)
4.0
Blu-rayも未所持でTVでも鑑賞した事がない完全初見。
「恋愛物」程度の事前情報しか無かったので線路内での「写実主義的」なファーストカットから驚いた。
体感90分くらいだったが、更に短い72分だとは。ドラマシリーズや映画のシリーズ物に追われてる強迫的な今となっては、このくらいの作品が本当に丁度良く、心地良い。
商業的にも芸術的にも「宮崎駿」が君臨し、その隙間に「高畑勲」が存在し得る前の、まだ僅かな選択肢が存在した時代のジブリだからこそ成し得た作品なのだろうか。門外漢なので的外れな推測の可能性が高いが。
田舎に越してきた我儘で高圧的な美人に振り回された進学校での日々を追想し「俺はあの娘が好きだったんだな」と受け入れるまでのシンプルな物語。
自分を試すような言動に反感を抱くし感情優先な衝動性に振り回されイライラもするが、唐突に見える大人な一面や、爽快感すら抱く気の強さや、性根が悪い訳じゃないんだなと思い直す、そうした「共に過ごした時間の積み重ね」で相手に好意を抱くものの、幼さ故や周囲への配慮の結果、自分自身に素直になれないってのが「10代の恋愛物」として丁寧で良かったです。
「褒められない部分」も含めて好きになるのがね。いいですね。
ブロマンス的な映画でもあるのだが、ホモソーシャルってほど醜悪でも下品でもなく、それでいて湿度が高い関係性ってのが最高でした。
モモモ

モモモ