ひでやん

武士の献立のひでやんのレビュー・感想・評価

武士の献立(2013年製作の映画)
3.6
伝統ある加賀料理の基礎を築いた加賀藩舟木家の話ということで実に興味深かった。

自分は生まれも育ちも石川県なので、郷土料理の治部煮や加賀料理を食したことがあり、実在した包丁侍の安信と、献身的に夫を支える妻の物語は楽しめた。

能登の海の風景と、美味しそうな料理の品々を目で堪能した。

刀に未練があり、包丁侍として家を継ぐ気もない夫に料理を教える春は、姉さん女房で肝っ玉が据わっている。

「つまらないお役目だと思っているからつまらない料理しか作れないのではありませんか?」

姉さん女房は時に厳しく時に優しく、夫の心を上手に動かす。春によって料理の腕も、人としても成長していく安信。

料理の勝負に負けたら指南を受けると約束させた春。刀を遠ざけ夫の命を守った春。食材探しの過酷な旅で足がボロボロになった春。上戸彩は美人だな、と思った春。最高の姉さん女房だ。

新藩主の着任祝いである宴の席に、春と共に安信は料理を振る舞うことになり、徳川家や近隣の大名を招待してのおもてなし。

料理人は怒りや憎しみを捨て、相手が誰であろうと最高の料理を振る舞い、それを食する者は、殿様とか将軍とか身分なんて関係なく、黙って食べるべし!うまいもんは、人の心を幸せにする。

もしも戦国時代に武力ではなく料理の腕で競い合ったなら…人は斬らずに大根切って、互いの胃袋を掴み合う世を想像してみた。

誰が一番うまい杏仁豆腐を作れるか。
「杏仁の乱」

徳川、黒田が率いる東軍が作った料理を西軍が食べ、毛利、石田が率いる西軍が作った料理を東軍が食べる東西対抗戦、
「関ヶ原の会食」……なんてね。
ひでやん

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